山田詠美著 『ジェシーの背骨』
                                    & 『蝶々の纏足(てんそく)






                        
2008-11-25


(作品は、山田詠美著 『ジェシーの背骨』、『蝶々の纏足』河出書房新社による。)


            


『ジェシーの背骨』
 昭和62年(1987年)8月刊行。(文庫本)
 芥川賞候補作品。(昭和61年7月)


『蝶々の纏足(てんそく)』
 初出誌「文芸」1986年文芸賞受賞。(昭和61年)
 昭和62年1月刊行。芥川賞候補作品。(昭和62年1月)

 山田詠美:
 昭和34年(1959年)、東京生まれ。
「ベッドタイムアイズ」で昭和60年度(1985年)文芸賞受賞デビュー。
 同作品で第94回芥川賞候補。

◆「ジェシーの背骨」の主な登場人物 

ココ  自己中心的な女。リックを男と女として愛している。その息子ということでジェシーとうまくやろうとするが苦手。
リック  ジェシーの父親、10年以上暮らした妻と離婚。初めの1ケ月母親の所にいたジェシーは母親とうまくいかず、父親の元に引っ越して来る。中年の酒飲み。
ジェシー  母親の教育を何もうけず、母親に捨てられ、母親を憎んでもよさそうだが、彼女のことを決して悪く言わない。ココに対しては子供らしからぬ態度を示す。

読後感:

ジェシーの背骨:

 父親リックとその息子ジェシー(11歳)、母親に捨てられたジェシーは、それでも未だに母親に思いを寄せている。一方父親のリックと愛し合うココであるが、ココはジェシーの扱いに手を焼き、好きになれない。ココとジェシーの関係は11歳の子供の扱いではすまない。嫉妬の味をジェシーに覚えさせた彼女(ココ)は同じ感情で報復を受ける。ジェシーのことは誤って生まれ出てきた悪魔だと思う。そんな大人と子供の三角関係でストーリーは展開する。

 ココの立場、感情と心理、ジェシーの理解できる感情、心理が絡み合ってその行動はなかなか面白い。そして著者特有(?)の体にまとわりつく表現がちりばめられている。最後はどんな解決方法でリックとココは別れ別れにならずに落ち着くのかは読んでのお楽しみ。

 芥川賞作品候補に上がったのはそれだけのことはありそう。


◆「蝶々の纏足」の主な登場人物 

瞳美  えり子の家は隣同士。自分の魅力を確認させてくれた麦生との交わりでえり子に対抗する。
えり子  幼稚園に行かず、ピアノを習い、叔父から絵も。学校では瞳美のことを親友と言い、クラスでも美しさでも、その動作でも皆の羨望の的。
麦生(むぎお)  クラスメイトの男の子。瞳美と男と女の間に横たわるやるせない空気を理解することで二人の雰囲気は合う。しかし部屋に田の女の口紅が転がっていたことで別れる。


読後感:

 纏足(てんそく)とは辞書によると(昔、中国で)婦人の足を大きくしないため布を固く巻き付けておいた風習とある。こんな言葉を使う著者はただ者でない。

 話の内容は、私(瞳美 16歳)の家族が同い年のえり子の隣に引っ越してきて親友の間柄となるが、その関係は、えり子の引き立て役、常に後ろに控えているといった役所。

 それが嫌で、男女間のことで大人になることで自分が内面的にえり子より進んでいることを知らせて優越感を持とうとする。えり子の心の中にひそむ悪魔のような一面は憎らしい。

 山田詠美という作家は女性に人気があるよう。自分にとって、どうも内容的には好みではないが、感覚は現代にマッチしているのかも知れない。注目度は理解できる作品である。

  

余談:
 山田詠美の作品「トラッシュ」という作品を手にしたが、表紙の絵が大きな黒人の顔(?)があり、なんだか内容を予感させるようであった。しばらく読んでいて、これは長続きしないと投了してしまった。
 なんということだろう? しばし考え込んでしまう。

背景画は。「蝶々の纏足」の内表紙を利用。

                    

                          

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