薬丸 岳著  『 誓約 』

 

              2016-03-25



(作品は、薬丸 岳著 『 誓約 』  幻冬舎による。)

          
 

 初出 「パピルス」(2012年4月号〜2014年2月号)に掲載された作品を加筆・修正。
 本書  2015年(平成26年)3月刊行。

 薬丸 岳:(本書より)

1969年兵庫県生まれ。2005年に「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。著書に「ハードラック」「友罪」「その鏡は嘘をつく」「刑事の約束」「神の子」など多数。

主な登場人物:


<私>
向井聡
(さとし)
/高藤文也
妻 香
娘 帆花
(ほのか)

ダイニングバー「HEATH」の共同経営者でバーテンダー、“マスター”と呼ばれる。昔の高藤文也のことは妻には内緒にしている。
高藤文也は顔半分痣のため、整形手術をし、別人(向井聡)に生まれ変わる。
娘の帆花は小学3年生。性格も温厚で優しい。

落合幸弘 ダイニングバー「HEATH」の共同経営者でチーフシェフ、“オーナー”と呼ばれる。
アルバイト

・宇都めぐみ、38歳。3年前離婚、息子の俊(9歳)と二人暮らし。
・佐藤公平、25歳。入って3ヶ月。若い頃の私に似て、暴力事件を起こし、少年院に入っていたことがある。

坂本伸子
娘 由希子

私が跨線橋で死のうとしていたとき出会った老女。
娘の由希子(当時17歳)が門倉利光と飯山賢治に高校から帰宅の途中殺され二人は無期懲役に。恨みを果たしたいと整形手術をする私に、金と引き替えに二人が出所したら殺すとの誓約をする。

真壁 高藤文也の時代の刑務所仲間。出所後も一緒に悪事を働いた。私は向井聡の戸籍を真壁から買う。

物語の概要: (本書の裏表紙に記載の文章より抜粋。)

落合に誘われ、レストランバー共同経営者となった向井。妻と娘との穏やかな生活。だが、1通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた…。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。

読後感
  

 新聞広告を見、比較的早く図書館に購入リクエスト予約を入れた本作品。図書館の所蔵7冊、読んでみての時点での予約数は1。何を意味しているか?実際読んでみて感じたことがそのまま表れていることに納得。
 こんな風に感じるのはあまりないのだが、感情移入が起こらない。いかにも作り物といった印象を感じてしまった。主人公の向井聡(昔の高藤文也)が坂本伸子と交わした殺人の誓約を巡り、16年を経過して刑務所を出所してきた二人を殺すことがそもそも現実離れしていて、架空の話としか映らない。

 主人公が家族を守るために二人を探しながら、殺人犯として警察にも追われながらも犯人(約束をした当の本人は死亡しているのに殺人を強要する)を追い詰めるミステリーはそれなりに面白いけれど。
 なのにふとしたことで単に作り話と感じてしまうところはむなしい。
 ラスト近くで脅迫の犯人を知るシーンは意外性があり驚いたが・・・。

  

余談:

 薬丸岳の作品はすでに何冊か読んで楽しみにしていたが、どういうわけか今回の作品は以前の感動を裏切られたようで残念。 

背景画は、水をテーマに。

                    

                          

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