薬丸 岳著 『アノニマス・コール』








              2018-12-25
(作品は、薬丸 岳著 『アノニマス・コール』    角川書店による。)
          
  初出 「小説 野性時代」に、平成2510月号〜平成2612月号まで掲載に加筆・訂正したもの。
  本書 2015年(平成27年)6月刊行。

 薬丸 岳
(本書より)
 
 
1969年兵庫県生まれ。2005年「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。他の著書に「悪党」「刑事のまなざし」「友罪」「その鏡は嘘をつく」「刑事の約束」「神の子」「誓約」などがある。    

主な登場人物:

朝倉真志(しんじ) 元神奈川県警組織犯罪対策課の刑事。3年前の事件がらみで懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決を受け退職。今は派遣として坂戸の工場勤務。梓を誘拐され犯人を追う。

安本奈緒美
娘 梓
父親 正隆

朝倉真志の元妻であり元警察官。介護ヘルパーでもうすぐ2年半になる。
介護福祉の国家資格を目指している。
・梓 小学5年生。誘拐される。
・父親は元警察官で警察署長をしていた。当時組織対策課の課長時代朝倉は部下。

唐木将一 朝倉真志の警察学校の同期。真志のライバル。
特殊斑に属し、誘拐事件の真犯人として朝倉真志を追っている。
高橋千春 組織犯罪対策課で朝倉真志の同僚であったが、3ヶ月前特殊斑に異動、唐木と同じ班。
新井俊彦 3年前横浜市内で保育園の児童等7人を車ではね自らも事故死した25歳の男。男はヤクをやっていたと警察発表。前科持ち。
戸田純平 朝倉と同じ工場でバイト。酔っ払いの戸田、バイクはうまい。
朝倉の誘拐犯捜しへの協力者。
岸谷勇治 表向きは7年前まで横須賀で興信所を経営、裏の世界に通じる前科者。
朝倉の誘拐犯捜しへの協力者。
春日 小さい診療所を営む。
岩城英明

元警察官。事件の真相を知っている。6年前離婚、今は肝臓がんであと1年の命。
・倉持 小学校からの幼なじみ。岩城の退職後、彼を雇っている。

西沢誠一郎 最大野党と言われる平安の会の党首。
いずれ総理大臣になるだろうと目されている。

補足:3年前の横浜市内の保育園の近くで園児や保育士の列に車が突っ込んだ事故。事故により7人が亡くなり、車を運転していた男(新井俊彦)事故死した。男が薬をやっていたことが原因と警察の発表。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 3年前に警察を辞め、家族も離れて暮らす真志に、娘を誘拐したと匿名電話がある。自力で誘拐犯を捕まえるため動き出すが、誘拐事件はやがて真志がすべてを失った原因となる過去の事件へとつながり…。        

読後感:

 何とも複雑な物語である。元警察官の朝倉真志の娘の梓(小学5年生)が誘拐された。別れた元妻の安本奈緒美とともに救うべく犯人の要求に従いつつ、犯人捜しをするが、相手が自分たちの内情を知りすぎていること、こちらの動きを監視しているのか、また犯人が途中で変わってしまって、要求も違った方向になったりと。

 前半は単なる誘拐事件の物語かと思って、読書録も書くことがないなあと感じたり。
 後半になってくるとさすがに薬丸岳本来の味(?)が出てきて読者をぐいぐい引き込んでいく。
 詳細を書くと読者に悪いのでこの辺りでとどめるが、警察の隠蔽か、犯人は果たして誰なのか、守るべきは家族なのか、名誉なのか、正義なのか、ラストで「ふたりで正義を実行したい。この子に恥じないように」が胸を打つ。
 

余談:

 HPの更新時期の期日が迫ってきた。12月は師走、色々あって余談欄が空白であることにゾッ! 焦っても何も思いつかず今回はパス。 
  
背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
戻る