宿野かほる著 『ルビンの壺が割れた』









              2019-01-25

(作品は、宿野かほる著 『ルビンの壺が割れた』    新潮社による。)

          
  
  本書 2017年(平成29年)8月刊行。書き下ろし作品。

 宿野かほる(やどの・かほる):
(本書より)
 
  覆面作家。   

主な登場人物:

水谷一馬

今は50代半ば。障碍者が入っている施設で働く。
大学時代演劇部の部長。大学の演劇祭で「ルビンの壺が割れた」の脚本、演出を行う。

田代未帆子 「ルビンの壺が割れた」のヒロインを演じる。一馬との結婚式当日、会場に現れず姿を消す。結城未帆子の名前でフェイスブックの歌舞伎のページに投稿している。

濱田優子
叔父夫婦

浜松の叔父夫婦の娘。叔母の連れ子。水谷一馬の許嫁。
・水谷一馬は叔父(濱田栄次郎)夫婦に引き取られる。

宮脇 大学時代演劇部の演出補佐。劇団のため裏方として活躍。
高尾 大学時代演劇部の副部長。田代未帆子と高校時代同級生、仲が良かった。
脊山恵美 田代未帆子の友達。
香山紀子 大学時代演劇部で、初め「ルビンの壺が割れた」のヒロイン役だった。
矢代幸三 「ルビンの壺が割れた」の評判から劇団のスポンサー役を申し出、資産家。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」…。送信した相手はかっての恋人。SNSでの邂逅から始まったぎこちないやりとりは、徐々に変容を見せ始める。覆面作家によるデビュー作。         

読後感:

 全編水谷一馬と結城未帆子(結城は偽名、旧姓は田代)とのメッセージのやり取りだけ。
 最初は本人かどうかの確認するやり取りから、本人と確認されると結婚式当日会場に現れなかった未帆子に対する疑問を抱きつつ、二人の出会いから演劇部での演技力、主役を張るまでに到った状況など演劇に関するやり取りがメインを締める。

 やがて個人的な面に到り、許嫁の存在、生い立ち、結婚式当日の出奔した理由へと進展するわけだが、印象としては水谷一馬には被害者、未帆子には何か訳ありの状況が感じられるも、未帆子の毅然と反発する言葉がしっかりした女性という印象が見受けられた。
 所が、どんでん返しが待っていた。
 徐々に変容が見え出す後半から次第に仰天すべき内容が待っていたとは。
 なかなか着想が面白い。
 

余談:

 宿野かほるという作家の紹介文が本書に記載ない。
 そこでネットで調べて「波」2017年9月号に掲載の中から

 「わたしが働いているところは特殊な業界で、本名が知れると、仕事に差し障りが出る可能性があります。また『ルビンの壺が割れた』はあくまでフィクションではありますが、どことは言えないものの、着想を得た中には事実に基づく部分もあります。わたしが本名をさらすことによって、友人や関係者に迷惑をかけるわけにはいきません。それで本名、性別、年齢、職業を伏せていただきました。わがままを申し上げて本当にすみません。次作についてですが、正直に申し上げると、わたしはこの作品一作でお終いにしたいと考えていました。」    

背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
戻る