綿矢リサ著 『手のひらの京』



              2019-09-25

(作品は、綿矢りさ著 『手のひらの京』    新潮社による。)
                  
          

 初出 「新潮」2016年1月号。
 本書 2016年(平成28年)9月刊行。

 綿矢りさ:
(本書に記述なし)   

主な登場人物:

<奥沢家> 京都在住。
長女 綾香

結婚願望で焦りのある31歳。図書館勤務。
性格はのんびり屋、腰が重い。

次女 羽依

割と大きな須田電子の新入社員。負けず嫌い、料理嫌い、すぐ忙しがる。誰とでも如才なく会話を弾ませられる。
男性社員にはもてるが、女子社員には嫌われている。

末娘 凜 大学院生。就職は東京都内の食品会社希望、京都を外から見たいと望む。羽依の1つ年下。
母親  家族のための手料理卒業宣言。これからは趣味に生きると生き生き。
父親 蛍 日頃四人の女に圧倒され、かつ粗食を全く厭わない。
前原智也 羽依の会社の新入社員の指導役、30過ぎ。自分のモテ自慢。
梅川 羽依の会社の同期。
宮尾俊樹 羽依の会社の営業部、独身39歳。羽依の飲み会で、姉のことに興味持ち、見合いをすることに。はにかみ屋。
未来(みき) 凜の同級生。広島から京都に住みたいと京都市内の大学院選ぶ。
凜の相談相手。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 おっとりした長女の綾香、恋愛に生きる次女の羽依、そして自らの生きる道を模索し続ける三女の凛。奥沢家の三姉妹の日常に彩られた京都の春夏秋冬があざやかに息づく、綿矢版『細雪』。             

読後感:

 言わずと知れた谷崎潤一郎の「細雪」が持ち出されるごとく、綿矢リサ版「細雪」は舞台は京都。京都も大阪とは別の意味でいにしえの縛りがあって、凜にとって好きな場所ではあるが、その土地に縛られてしまうのが堪えられず、一度飛び出してしまいたい気持ちに動かされてやまない。末娘が故にその気持ちが分かってしまい、自分も大学を出ての就職先は東京を目指したのと似たところもあり、応援したくなる。

 両親はやはり京都を出ることに反対、父親だけが多少理解を示す程度。
 姉の綾香に相談しても、姉は姉で自分の年の焦りにいまいち、次女の羽依には男の見分け方の教示に尊敬したり、少しは気持ちが晴れたり。

 波乱含みなのは次女の羽依の相手。キレると相手が男でも容赦せず、言葉遣いでも負けてはいない。前原をこけにし、梅川との恋に切り替えての決着を付けようとしたが、羽依は後悔することに。
 さて、残る姉の綾香のお相手宮尾との交際は、発展するのだろうか。クリスマスイブ、お正月と二人の姉の行く末は?
 お正月でも凜の表情には陰りが。未だ進路について悩んでいる様子。
 ラスト、父親の人間ドックの結果に赤信号。家族の対応には・・。
 家族のふるまいを遠くでひとり思う凜、けんかもするけどこういう時こそお互い励まし合えば生まれてくるパワーがある。会いたい。
 わかるなあ。
 

余談:

 羽依は食品に関する研究の大学院生、物語の中で料理に関する有益な話が載っていて興味が湧いた。すなわち、
  ・高級でないお肉を柔らかくする方法。
 ・あさりの酒蒸し時、アサリの砂出しの方法。
 小説を読んでいて得をする話も読書の楽しみのひとつである。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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