渡辺淳一著 『孤舟』









                2010-12-25


(作品は、渡辺淳一著 『孤舟』  集英社による。)

              
 
 

 本書は「マリソル」2008年10月号から2010年1月号までの連載をもとに大幅に加筆訂正されたものである。
 本書 2010年9月刊行。

渡辺淳一:

 1933年10月北海道生まれ。札幌医科大学卒業。整形外科医の傍ら執筆をはじめ65年「死化粧」で一躍脚光を浴び、70年「光と影」で第63回直木賞を受賞。80年「遠き落日」「長崎ロシア遊女館」で第14回吉川英治文学賞を受賞。著書多数。

◇ 主な登場人物

大谷威一郎
妻 洋子
息子 哲也
娘 美佳
愛犬 コタロウ
広告関係の大手会社の上席常務の執行役員であったが、社長派閥に属していなかったため、社長の腹心の部下、同期の井原に子会社の社長ポスト内示を蹴り、定年退職を選んで半年。
妻の洋子は毎日のように居座る夫のストレスで不機嫌きわまりなし。
息子の哲也は今年28歳、家を出て川崎の僚住まい。
娘の美佳は今年26歳、日本橋のアパレル関係の会社勤め。会社近くにアパートを借りて家を出ていこうとして一悶着。
小西佐知恵 27歳OL。デートクラブに登録の女性。妻の洋子の家出で威一郎、アバンチュールを楽しもうと。
物語の概要図書館の紹介文より

 大手広告代理店を定年退職した威一郎。バラ色の第2の人生のはずが、待っていたのは、夫婦関係と親子関係の危機。娘は独立し、妻も家を出て…。定年後の夫婦の形を問う、待望の最新長編。


読後感

 描かれている内容は実に数年前に経験したような、定年退職後の生き方を巡る葛藤と何ら変わらないというほどのもので、こういう内容なら自分にも作品が描けるのではないかと勘違いをしそうである。でもそうわ問屋がおろさぬ難解の物書きの世界であろう。

 しかし、夫の悩みと妻への不満、とまどいは身を切られるほど切なくも真実のものであることにおもしろがって読んでいる場合ではないのである。 こういう難局を乗り越えて今日の姿があり、まだ悩みを時々は繰り返しながら毎日を送っている感じである。 情けない?
 とはいえ主人公の夫は少しだらしがなさ過ぎ、箸にも棒にもかからない馬鹿亭主過ぎる。 こんな亭主なら愛想を尽かされてもしようがないと思うのは酷?

 先に何ら変わらないというほどのものといったのは撤回、自分はそんなにひどくはない(つもり)。 ただ中で“生き甲斐を見出さないといけない”ということについてはそのとおりで、定年退職後1,2年の内にそれを見出さないと毎日が日曜日、時間ばっかりあってどうして時間をつぶそうかなんて考えに押しつぶされてしまうだけ。 早死にが待っていることに。
 身につまされないように頑張らないとと反省の機会の読書の効果になったかも。


余談:
「端から何も期待されていない、もう俺は要らない人間になってしまった」人生と感じたら悲しい。 関心を持ち続けること、やりたいと思うことを持つこと、そして気力を奮い立たせてくれるものを探し求めることを肝に銘じて。
背景は本作品の表紙を利用。 

                    

                          

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