物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
上巻
和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。毛利は兵糧入れを乞われるが、成否は「海賊王」と呼ばれる村上武吉と娘の景にかかっていた…。
下巻
織田方の猛攻を雑賀衆の火縄が止め、門徒の勢いを京より急襲した信長が粉砕する。毛利・村上の水軍もついに難波海へ…。「のぼうの城」から6年、型破りな人物と感動。著者最高傑作の誕生。
読後感:
痛快戦国時代小説というか、随所に読みどころが用意されていてついほろりとしたり、拍手喝采したりと。
また出典なりの説明が途中挿入されていて(よく司馬遼太郎作品に見られるが)理解の一助にもなる。
上巻での圧巻はやはり織田方の天王寺砦の大坂本願寺木津砦を襲撃する4千ほどの軍と鈴木孫市率いる雑賀党の鉄砲隊および一向宗の1万数千の門徒たちとの戦。
織田方の沼間家の次代の触頭と目される義清と海賊衆の真鍋家の七五三兵衛の人物対比が面白い。この時海賊衆に嫁ぎたいとする村上武吉の娘景(きょう)姫は故あって織田方の天王寺砦にいたが、景自身は門徒の留吉や源爺を大坂本願寺に送り届ける約束で道中すっかり懇意になってしまっていてこの戦は第三者的立場で眺めていたのだが。
遡って村上一族の家系も独立的立場の能島(のしま)村上(当主 村上武吉)、毛利家に取り込まれている因島(いんのしま)村上(当主 村上吉充(よしみつ))、来島(くるしま)村上(当主 村上吉継)の三家からなる(三島村上)も、村上海賊の名をとどろかせているのは能島村上。
大坂本願寺から兵糧10万石を木津砦に運び込むよう頼まれている毛利家が三島(さんとう)村上に頼みに来るシーンも見逃せない。
そこでも景姫の見る目は婿選びの観察ぶり。
さて下巻になると先の天王寺砦での源爺の死に様を見て「もう戦なんぞ見とうない。戦なんて嫌じゃ」と父武吉に涙を流した景姫であったが、父から毛利家の腹の内を聞いたとたん天を仰ぎ絶叫する景。
留吉や源爺、門徒たちの他人のために戦う彼らのために「オレはそういう立派な奴らを助けてやりたい」と。武吉は”鬼手が出るか”とつぶやく。
小早川隆景の待つ上杉謙信が出陣するか否かを見極める7月13日が過ぎ、景の活躍で十津川河口での船戦が切って落とされ、壮絶な戦いが展開する。その様子がそれぞれの対戦で描写され、それぞれの人物像が描かれる。しかもそれは7月13日の日没から翌14日の未明に至るまでのことであった。
戦の模様は読んでいる内にちょっとくどくて焦点の盛り上がりに欠ける点もなくはないが・・。終章の戦の後のそれぞれの行く末の史実は結構面白かった。
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