浦賀和宏著 
         『彼女のために生まれた 』







            2014-11-25




 (作品は、浦賀和宏著 『彼女のために生まれた』   幻冬舎による。)

              

 本書 2013年(平成25)10月刊行。書き下ろし作品。

 浦賀和宏:(本書より)

 1978年神奈川県生まれ。98年に「記憶の果て」で第5回メフィスト賞を受賞しデビュー。主な著書に、20万部を超えるベストセラーとなった「彼女は存在しない」ほか、「ファントムの夜明け」「彼女の血が溶けてゆく」「こわれもの」など。

主な登場人物:

桑原銀次郎(主人公)
父親 将至
(まさし)
母親 京子
(60歳)

フリーライター。証券会社勤務をクビになり妻とも離婚。大学の先輩に救われフリーライターとして東京在住。
実家は浜松、母親は突然押し入ってきた犯人に胸を刺され、その上頸動脈を切られ死亡。
父親は抵抗し、手に怪我を負うも命は助かる。

桑原信介
嫁 雅代
息子 竣
(2歳)

銀次郎の兄。大手飲料メーカー勤務。数年前博多に転勤。
母親が殺されたのは弟のせいと言う。
・義姉の雅代は銀次郎を信じると。

渡部常久(わたべ)
母親 葵
長男 健一
長女 嘉奈子

銀次郎は口を利いたこともないという青嵐高校時代のクラスメート。桑原家の実家に刃物を持って押し入り、母親を死傷させ、父親に怪我をさせて逃走、直後母校の屋上から飛び降りる。遺書に記されていたことは・・・。
・母親の葵は土下座をして謝罪に現れる。
・姉の嘉奈子は、責任は銀次郎側にあると常久の遺書をネタに金を請求してくる。

赤井市子
父親 貴文
母親 春子
息子 剛
(中学生)

渡部常久や銀次郎のクラスメイト。15年前(高3の時)、青嵐高校の屋上から飛び降り自殺をする。原因は不明。
・両親は日本蕎麦屋「閣賀楽」を営んでいたが、市子が自殺をし父親はそのショックで店をたたみ、酒に溺れて病死。

霧島聡美(さとみ) 桑原銀次郎の元妻。新宿の病院に勤めていたが、左遷され今は山梨の病院で内科医として働いている。
松前 静岡県警刑事部捜査一課の刑事。母親殺害事件の担当。
中田 “週刊標榜”の編集長。大学の先輩のよしみで銀次郎を救ってくれる。
青葉幸太郎 銀次郎と同じフリーライター。“週刊標榜”のライバル誌“週刊クレール”に渡部嘉奈子から入手した渡部常久の遺書をネタに母親殺しの記事を売り込む。


◇ 物語の概要: (本書より)

 母親を高校の同級生・渡部に殺されたライターの銀次郎。犯行後自殺した犯人の遺書には、高校の頃、銀次郎が原因で自殺した女性との恨みを晴らすためと書かれていた。なぜ母は殺されたのか。母の死の真相と身に覚えのない汚名を晴らすため、奔走する彼を次々襲う衝撃の真実。どんでん返しの連続に、一時も目が離せない傑作ミステリー!

読後感: 

 何とも変わった感じの題材に小説にはこういう切り口もあるんだなあと感心した。
 母親が高校時代のクラスメート(渡部常久)に殺された。父親も防御の際に傷を負う。そして直後犯人と思われる人間が母校の屋上から飛び降り自殺をした。狙われる覚えはないのに、犯人の残した遺書の間違い記述から原因は自分にあると父や兄からも思われ、身を置く場所すらない。そして犯人とされる姉からは逆に金を要求する脅迫行為まで受ける。

 この後どうやって自分の無実を訴えていけるのか。ライターだから対抗するには相手の遺書に対抗してそれを覆せるようなものを書くしか。それで一般の人に訴えるしかと。
 被害者の立場になり今まではライターとして被害者や加害者に臨んでいた立場が身に染みて感じる。それでも自分の身の潔白を証明しないとこれから先の自分はない、そして家族や甥の竣の立場も。

 そんなところからの視点で物語は展開するのだか、やっと身の潔白を証明する記事を世に出せ、世間の風向きが変わりいい気分になったにも関わらず、敵のライターの青葉の指摘に果たして母親殺しの真実が暴けていたのかと疑問に。そしてラスト近くにさらなる真相が明らかになっていく。
 なかなか凝った内容に唸ってしまう。

  

余談:

 主人公が週刊誌のライターということで、日頃週刊誌の記事や、取材の有様に反発するものをいだいているが、ライターとしてその取材の仕方に対する両方の立場での感想を記述しているのがおもしろい。 
 背景画は、舞台となった学校の屋上からの飛び降り自殺に関連して。