月村了衛著 『 黒警 』








              2019-03-25

(作品は、月村了衛著 『 黒警 』    朝日新聞出版による。)

          

  本書 2013年(平成25年)9月刊行。書き下ろし作品。

 月村了衛
(本書より)
 
 
1963年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。脚本家を経て、2010年に「機龍警察」(早川書房)で小説家デビュー。2012年に「機龍警察自爆条項」(早川書房)で第33回日本SF大賞、2013年に「機龍警察 暗黒市場」で第34回吉川英治文学新人賞を受賞する。著書に「機忍兵零牙」(ハヤカワ文庫JA)、「一刀流無想剣 斬」(講談社)がある。本作が日本SF大賞、吉川英治文学新人賞受賞後第一作となる。      

主な登場人物:

沢渡

警視庁組織犯罪対策部二課、警部補。中国語が出来るため組対に配属された。警察官になったばかりの頃の使命感は任官3年目には欠片も残っていない。妻とも別れた。
・新田 同僚の刑事。

波多野 滝本組(ヤクザ)の強面の新世代の武闘派。沢渡の2つ年下。

義水盟(ニセモノを製造している業者名)の幹部。
恐らく大都市の富裕層出身の中国人、36歳。10年前大連の共産党幹部王義敏(数々の違法行為を行い、沈の両親を破滅させた人物)を殺す。

警察関係者

・小淵係長 組対二課、沢渡の直接上司。偽ブランド商品の摘発担当。
・高遠 警察庁生安局長。次期警視総監とも警察庁長官とも。
  国際人材交流法案成立に注力。
・栗本警視長 警察庁出身、内閣官房に出向、現在内閣参事官。
  高遠の法案成立の根回しに高遠の手先となって。
・稲森課長 組対二課。
・山野井係長 生活安全課 中国人連続殺害事案担当。
・小板橋巡査部長 生活安全部。テレビの報道番組「警視庁二十六時」の<生安の星>と呼ばれる見てくれのいい刑事。
・早乙女 広報課。

義水盟 単なる不法入国者の寄せ集め? 天老会を向こうに回して立ち回っている。幹部として沈の名前が挙がっている。
天老会 上海系の組織、日本における黒社会勢力のひとつ。
東甚連合 滝本組の上部団体。天老会とは犬猿の仲。
垣之内昭三 大物議員。馬洞健と交流ある。
馬洞健 中国要人。
サリカ 不法入国人。息子と共に入国するも、息子は行方不明。スネークヘッドと関わりのあった天老会で仕事。天老会と警察の癒着を記録した“ペンちゃんノート”を持つ。沈がサリカをかくまう。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 トラウマをもつ無気力警官、武闘派ヤクザ幹部、そして若き黒社会の首領が交錯する時、漆黒の闇に潜む巨悪が顔を覗かせる…。『機龍警察』の著者による、ダークな味わいの書き下ろし傑作長篇警察小説。          

読後感:

 無気力状態で、警察官としては上には逆らえず悶々と過ごしている。一方で武闘派の一人行動のヤクザ、波多野をうらやむ沢渡。ふたりは互いに昔の不始末を思い出し、傷を見せ合うた腐れ縁の始まりである。
 そのふたりの間に現れた沈という男。波多野に関心を示すと共に、警察の人間である沢渡にも興味を持ってある提案を持ってくる。

 その波多野がサリカと共に殺される。残された沢渡と沈は仇を討とうと手を結び、動き出す。
 黒社会の闘争の中に警察の上の人間が絡んで沢渡と沈が画策する展開はようやく生きがいを見つけたようで痛快な仕掛けで警察の上層部の人間を追い詰める。
 後半になって胸のすくような仕掛けが炸裂する。

 

余談:

 2014年に刊行された「土漠の花」を4年ほど前に読んだが、なかなか激しくも強烈な印象があった。今回はそれに比べると強烈さはそれほどでもなかったが、でも作品の中でも語られる現在の不法入国人の問題、その中でも特に中国人の犯罪が嫌われるのは当然で、今後色々なことが発生しそうで嫌な世の中になりそう。     

背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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