月村了衛著 『土漠の花』    


               
2015-12-25



(作品は、 月村了衛著  『土漠の花』     幻冬舎による。)

               

 

 
本書 2014年(平成26年)9月刊行。
  
 月村了衛:(本書より)
 
 1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年、「機龍警察」で小説家デビュー。11年刊行の「機龍警察 自爆条項」が、「このミステリーがすごい!」第九位、第33回日本SF大賞を受賞。12年刊行の「機龍警察 暗黒市場」は、「このミステリーがすごい!」第三位、第34回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に「一刀流無想剣 斬」「黒警察」「コルトM851残月」など。 今、最も熱い物語を書ける作家として注目されている。
主な登場人物
<捜索救助隊>
吉松勘太郎 3尉、捜索救助隊隊長。指揮官として人望有り。
友永芳彦 曹長。新開とは性があわず、無機的な冷酷さを鼻持ちならものと感じている。両親を早くに交通事故で亡くし、孤児に。自衛隊に入り、我が家を再び得たようにさえ思う。年齢は新開と同じ31歳。
新開譲 曹長。ソマリア語をある程度解する。助けを求めてきたアスキラを、拠点に戻るために置いていけの言葉に不人情とみられることも。
朝比奈満雄 1曹。最年長。合気道をたしなむ古武士の風格、既婚者、37歳。
由利和馬 1曹。警務隊からわざわざ普通科を経て空挺団に入る。口数少なく人と打ち解ける様子は見られず。変人扱いする声も。
津久田宗一 2曹。射撃の名手、既婚者。
梶谷伸次郎

士長。機械に精通した技術者。整備でも腕利き。ムードメーカー、25歳。温厚な性格。由利を嫌っている。梶谷と由利の間になにかがある。

市ノ瀬浩太 1士。最年少の23歳、元水泳選手。
他に 緊急救命陸曹、原田1士、戸川1士、佐々木1士 の合計12名で構成。
アスキラ・エルミ ソマリアのビヨマール・カダン氏族の氏族長の娘。イギリスに3年留学、他国の氏族間抗争にワーズデーン氏族に追われ、自衛隊の救助隊野営地に逃げ込んできた。
ワーズデーン アスキラを殺してビヨマール・カダンを根絶やしにするつもり。
ハサン・ダヒル・ギュバン ソマリア最悪のイスラム武装組織アル・ジャバブ、その最も過激な勢力を指揮すると言われる最高幹部の一人。


物語の概要図書館の紹介文より

 
なぜここまで激しく攻撃されるのか。自衛官は人を殺せるのか…。絶え間なくふりかかる試練、窮地、想定外。無惨な死にひれ伏すか、紙一重の生を掴みとるか。男たちの絆と献身を描く、超弩級エンターテインメント。 
 
読後感

 ソマリアというと海賊の巣窟として有名で、自衛隊が民間船の航海安全のため派遣されていることぐらいの知識しか持ち合わせていない。そんな中この小説で自衛隊の活動の実態が、フィクションとは言え想像に難くない。

 捜索に出た隊の中の人物の、相克、生い立ち、その理由などが激烈な戦闘の中に織り込まれ、単なる戦闘描写だけでなく人間ドラマとして厚みを増している。
 新開と友永の確執、梶谷が由利を嫌うわけ、津久田の射撃の腕と実戦(人殺し)での戸惑い、市ノ瀬のいつも将来のかかった試合からの逃げの性格など。
 格闘場面での描写も緊迫感がある。

 そして友永の新開との死別による”何か”の正体、由利と梶谷の憎み、憎まれていることを知りながらの最後の行動が展開する。そしてラスト、あれだけ過酷な体験をしたことが世の中には知らされず、自衛隊の戦闘行為は無かったことさせられる現実に、恐らくこれからの日本の世の中がどんな風に展開していくことになるかを想像させるにたる大きな問題を投げかけている。

余談:

 敵方の武器が多数出てくる。早速ネットで調べてみた。

  ・PKM機関銃 ソ連製汎用機関銃 
  ・RPG-7 ソ連の開発した携帯対戦車敵弾発射機。     
  ・AKM ソ連の開発した自動小銃。  AK-47の改良型。
・ウージー イスラエル製の短機関銃。            

背景画は本書に出てくる自衛隊の98式小銃。

                               

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