辻村深月 『青空と逃げる』



              2020-10-25


(作品は、辻村深月著 『青空と逃げる』      中央公論新社による。)
                  
          

 初出 読売新聞夕刊連載。2015年5月27日〜2016年5月21日
 本書 2018年(平成30年)3月刊行。

 辻村深月
(本書より)  

 1960年生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞し、デビュー。「ツナグ」で第32回吉川英治文学新人賞、「鍵のない夢を見る」で第147回直木賞を受賞。「スロウハイツの神様」「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」「朝が来る」「東京會舘とわたし」「クローバーナイト」「鏡の孤城」など著書多数。

主な登場人物:

本条力(ちから)
母親 早苗
父親 拳
(けん)

小学5年生、10才。父親が交通事故に遭い、マスコミなどの嫌がらせや追っかけで母親と逃亡生活に。
・早苗 38才、主婦。大学卒業して力が生まれる28才の年まで「剣会」という小さな劇団に。
・父親 「剣会」に所属、そこで早苗と結婚。客演で、舞台の主演女優が運転する車に同乗、事故に遭い入院、その後姿を消す。

遙山真輝
(はるやま・まき)

エルシープロ所属の女優。
事務所が強くて、怖いお兄さんたちも沢山ついている。

鶴来崇(つるぎ・たかし) 「剣会」の主宰者。
[第一章] 川漁の夏休み (於 四万十)


母親 聖子

四万十の「多和田屋」ドライブインの息子、20才。
・聖子 早苗と学生時代の親友。高知に嫁いでくる。

[第二章] 坂道と路地の島 (於 家島)
藤井優芽(ゆめ) 姫路市の家島で力が知り合った剣道部の中学1年生。今年の4月に来たばかり。
[第三章] 湯の上に浮かぶ街 (於 別府)

安波悦子と関係者

別府海浜砂湯で働く砂かけマイスター、15年のベテラン。
・清末&親子 砂かけの同僚、娘純子&赤ちゃん湖恋(ここ)
・小手川(こてがわ)砂かけマイスター、20年のベテラン。
・秋好 事務方仕事担当。

英子(ひでこ)おばさん 坂戸湯のおばさん。早苗たちを2階に泊める。
松浦高馬(こうま) 遙山真輝の後輩、エルシープロ所属の俳優。
達海佑都AR丸ゴシック体M 遙山真輝(女優)の息子。
[第四章] あしたの写真館 (於 仙台)
谷川ヨシノ コミュニティデザイナーを職業とする「プロセスネット」の職員。

樫崎耕太郎
祖父

祖父のやっている「樫崎写真館」で写真の勉強をしている。
震災での写真の復元も仲間とやっている。
・祖父 震災を経験し、写真館を閉じようとするも、訪ねてくる家族の存在から息子と続けている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 深夜の交通事故から幕を開けた、家族の危機。押し寄せる悪意と興味本位の追及に日常を奪われた母と息子は、東京から逃げることを決めた…。一家の再生の物語。読売新聞連載の単行本化。

読後感:

 小さな劇団「剣会」に属していた早苗が、そこで知り合った夫本条拳と結婚、息子の力が生まれたが、夫は客演として舞台で主演女優の遙山真輝(はるやま・まき)の運転する車に同乗、事故に遭い、女優は顔に怪我をし、将来を絶望して自殺。夫も怪我をし入院するも、退院後姿を消す。それというのも女優との不倫騒動で事務所「エルシープロ」やマスコミからの追求を逃れるため?

 早苗と力も騒ぎに巻き込まれ、大学時代の親友を頼って四万十に身を寄せることに。
 そこから舞台は四国高知の四万十、それから姫路市家島さらに別府へと、そして仙台へと逃げる生活が続く。
 四万十、家島、別府、仙台での生活の様子が描かれる中で、特に印象深いのが家島での小学5年生の力と、これも今年の4月に移ってきた中学1年生の藤井優芽(ゆめ)との交流が胸にじんとくる。

 これらの生活風景が興味深いのとは別に、何故夫の拳が姿を消しているのか、何故「エルシープロ」が執拗に早苗たちを追っかけてくるのか。力の部屋に残されていた血糊が付いたタオルの中に包丁があったことの真相がミステリーとしても最後までつきまとってくる。
 別府に現れた女優の息子佑都(ゆうと)と力の相まみえる場面が、ラストでの真相の肝であったとは。
 果たして早苗たちと夫の拳の先はどんな運命が待ち構えていたのか・・・。


余談:

 四万十、家島、別府、仙台での生き様描写は、飽きさせないでぐいぐいと読者を引き込んでいく手腕は流石。
 別府での砂湯の砂かけの様子は興味深かった。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
戻る