物語の概要:図書館の紹介より
2008年6月8日午前9時。緒方隆雄、滋賀刑務所を出所。罪状は強盗致死。ドミノ倒しのように不運が続き、すべてを失った男が歩き出す。21世紀の日本に刻む、現代文学の到達点。魂を震わす、慟哭の道。
読後感:
緒方隆雄なる男(40歳前)が滋賀刑務所を出所することから始まる物語。彼と関係する人物たちとの関わり合い、それらの人物の生い立ちなどが時代をさかのぼって展開する。そして阪神・淡路の大震災(1996年1月17日未明)での運命にも翻弄される。
出てくる土地の名は大阪北や南の懐かしい地名が次々に出てきて、昔の故郷を思い出させる。やはり全然知らない土地の話でなく、過去に馴染みの土地柄のことが余計に身近なものに感じてしまう。
特別ワルの人間でもないのに、巡り合わせというか、ツキがないというか、不運の連続、特に結婚して幸せな1年半を経たところで、冬のある日朝起きてみたら妻のゆかりが忽然と姿を消している。訳も分からず尋ねる中、妻の知らなかった行動を知ることに。
作品の中に強盗致死を起こすことになる仲間の越智がくしくも放った言葉「おれにとって、最初の躓き(つまづき)は何やったやろ?」がその後の人生を閉じる間際に思いを馳せる。
生活手段のための仕事先、まずはお金が定期的に入ってくること、そして住みかがあること。まずこのベースがないと人は正しく生きていけない。今の状態も同じこと。
いい人がいても、不運が全てを奪っていく。そんな中でどうして刑務所にはいることになっていったのか、出ても刑務所に又戻ることになってしまうのか。こんな人生を送るハメにならなければそれだけでも幸せと思える。
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