レフ・トルストイ著  『戦争と平和』 (その1)
工藤精一郎訳


              2012-02-25

(作品は、レフ・トルストイ著 『戦争と平和』 新潮文庫による。)

            
  

 
 
本書 昭和47年(1972年)3月刊行

 トルストイ:(ウィキペデイアと解説の工藤清一郎氏の資料より) 

 1828−1910年帝政ロシアの小説家・思想家。ドストエフスキー、イワン・ツルゲーネフと並んで19世紀ロシア文学を代表する巨匠。代表作に「戦争と平和」、「アンナカレーニナ」、「復活」など。
 トルストイはまれに見る自伝的な作家。彼の82年の生涯は、彼の持ついずれも桁外れのたくましい生命力と精神力と、誘惑と、求道と、あらゆる美徳と、あらゆる悪徳との参加した、悲劇的な栄光ある戦いの戦場であった。


物語の概要:ウィキペディアより

 19世紀前半のナポレオンによるロシア遠征とその失敗、アウステルリッツの戦いや、ボロジオの戦いなどの歴史的背景を精緻に描写しながら、1805年から1813年にかけてあるロシア貴族の3つの一族の興亡をピエール・ベズウーホフとナターシャの恋と新しい時代への目覚めを点描しながら綴った、登場人物500人を超える群像小説。 ピエール・ベズウーホフが、著者トルストイの分身と見られ、彼の没落していくロシア貴族から、大地の上で強く生き続けるロシアの農民の生き様への傾倒へと続く魂の遍歴は、著者の心の動きの反映とも言われる

主な登場人物

アンナ・パーヴロヴナ
・シェレール?
(アンネット・シェレール)

皇太后のお気に入りの女官、40歳。ペテルブルグの社交界における名花。
ドルベッコーイ公爵夫人と別人?

アンナ・パーヴロヴナ・ドルベッコーイ公爵夫人
一人息子 ボリス
(ボリス・ドルベッコーイ)

ロシア名門の一つ、今は没落。公爵夫人の家は窮乏状態でウラジーミロヴィッチ伯爵と親類のため、援助を受けている。
ロストフ伯爵夫人とは幼い頃からの仲良し。
ボリス:ワシーリィ公爵の支援をうけ近衛士官に。

◇ロストフ家
イリヤ・ロストフ伯爵
伯爵夫人
(ナタリイ・シンシナ)
長男 ニコライ
(ニコールシカ)
上の娘 ヴェーラ
下の娘 ナターシャ
末子ペトルーシャ(男の子)
姪 ソーニャ

ロストフ家の経済状態は好ましくないが、変わらずの生活を続けていて、最後は富裕な嫁を取ることを目論む。
ニコライ:ボリスと親友。軽騎兵を志願。
ナターシャ:踊りの名手。ボリスに夢中。ボリスは後4年したら正式にナターシャに結婚を申し込むと。
その後妻(リーザ)を亡くしたアンドレイ公爵と1年待つことを条件に婚約、しかしアナトーリ・クラーギンと親密になり誘拐事件にまで発展。
ソーニャはニコライに夢中。

◇ベズウーホフ家
キリール・ウラジーミロヴィッチ・ベズウーホフ伯爵
庶子 ピエール
(妾の子)

エカテリーナ女帝時代の有名な顕官。大富豪、しかし明日をも知れぬ病状。
ピエールはニコライと親友。無頼漢。
ピエール、ワシーリィ公爵の親類筋に当たる。ベズウーホフ家の財産を継ぎ、大富豪となるが、エレンとの結婚で不貞を疑い別居、フリーメーソンの会員に。

◇ボルコンスキー家
ニコライ・アンドレーエヴィチ・ボルコンスキー公爵
公爵令嬢 マリヤ
アンドレイ・ボルコンスキー若公爵
妻 リーザ(若伯爵夫人)

社交界の<プロイセン王>と渾名。
老公爵:田舎の禿山(はげやま)に令嬢のマリヤと住む。
アンドレイ若公爵:アウステルリッツ会戦で負傷後、戦争には行かないと。ピエールと親友なるも考え方に違い。
若伯爵夫人:赤子を残して無くなる。老公爵は孫をアンドレイ公爵と呼ぶ。
アンドレイ公爵はナターシャと秘密の婚約、老公爵は不賛成。
マリヤ:不器量だが、心優しく双方の間で悩む。

ワシーリイ・クラーギン公爵
娘 エレン
息子たち インポリット
アナトーリ
デニーソフ?

エレン 社交界にデビュー、全社交界の憧れの美人。
    ピエールと結婚(第一巻)、しかしエレンがドーロホフと関係があるという噂にピエールがドーロホフと決闘、別居へ。その後復縁し社交界で輝く。
一方ピエールとの仲は冷え切ったまま。(第二巻)
インポリット:おとなしいばか。
アナトーリ:乱暴なばか。既に結婚、妻を捨てているのを隠し、ナターシャに近づく。
デニーソフはニコライと仲がよい?

カラーギン家
娘 ジュリイ・カラーギナ娘

マリヤと小さいときからの親しい女友達。マリアにアンナ・ミハイロヴナがワシーリイ公爵の子息アナトーリと結婚させようと白羽の矢の秘密を知らせる。
ボリス・ドルベツコーイと婚約(第二巻)

デニーソフ
(ワシーリイ・ドミートリチ・デニーソフ)

ニコライ・ロストフの親友。
まだ少女のナターシャに求婚するも受け入れられず、連隊に向かい負傷。

ドーロソフ (ニコライに夢中の)ソーニャに結婚申し込むも断られる。
そしてニコライ・ロストフ、カードでドーロソフにオオマケする。アナトーリの影の仕掛け人。

補足:公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順番。


読後感

「風と共に去りぬ」が南北戦争を背景にした物語に対し、「戦争と平和」はナポレオンとの戦争を背景にした物語と、ある種戦争を背景とした物語である点は似ているが全然異なるようなことの知識で読み出した。予備知識がないため、最初はロシアの公爵、伯爵の社交界の世界の描写で一体誰が今後中心になっていくのか判らず、困ったものであったが、次第に中心人物がロストフ家のニコライ、べズウーホフ家のピエール、ボルコンスキー家のアンドレイを中心に物語が展開していきそうである。

 第一巻はオーストリア軍とロシア軍が共同でフランスのナポレオンとの戦が始まろうとする時期から最初は勝利を確信していたのが、アウステルリッツの敗戦で一時退却して第二巻での次の戦争までの間の社交界の様子が描写されている。

 第二巻では1807年にナポレオンとの最初の講和条約が結ばれから1811年にかけ、次の戦争が始まるまでの上流社会の色々な人々の生活状態が描写されている。そこではロストフ家の娘ナターシャとアンドレイ公爵の秘密の婚約、そしてアンドレイ公爵の老公爵の言いつけで1年間外国に出かけ、その間にナターシャがアナトーリ・クラーギンとの恋が誘拐事件にまで発展し一騒動の末、アンドレイ公爵との婚約が破綻してしまう騒動やら、ピエールの妻エレンとドーロホフの不倫騒ぎでピエールがドーロソフと決闘までに至る始末、その後はピエールと妻エレンの間は冷たい風が吹くも妻は社交界の星となり輝くことに。

ピエールはナターシャの悲しむ姿に相談役の名目で愛を感じるまでに。 

第二巻は全編の中で最も詩的な部分とされている。

それにしても色んな人物の交差につけ、名前と人物、その関係がなかなか理解できなくて読んだ後何回か読み返さないと理解できないようだ。

  

余談:

 内容を理解するには整理しておかないとこの膨大な登場人物、名前の複雑さ(どうもロシア人の名前はピンとこなくてベスウーホフとかドルベツコーイといっても誰のことだったか判かりゃしない)、それに時代の流れが加わって頭の中は混乱しっぱなし。
・時代の流れ、戦争の流れを掴む。
・その間のそれぞれの家の人物と相互の関係を整理し、どういう考え方の人々か、特に恋愛関係を中心に人物の関連を整理してみる。
・もうひとつ地理関係、ペテルブルグ、モスクワの位置関係を知る。
 ということでこれらを理解して改めて読むと理解できそうである。一筋縄ではいかない作品と言える。
「風と共に去りぬ」が一本筋が通って、人物像の心の動きに集中できたのに対して、だいぶ違うなあというのが印象である。

背景画は、ネット”土曜日の書斎”より映画「戦争と平和」のアウステルリッツの会戦場面を利用。

                    

                          

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