遠田潤子 『 冬雷 』



              2020-03-25


(作品は、遠田潤子著 『 冬雷 』      東京創元社による。)
                  
          

  本書 2017年(平成29年)4月刊行。

 遠田潤子:
(本書による)  
 
 1966年大阪府生まれ。関西大学卒業。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年「アンチェルの蝶」で大藪春彦賞受賞。18年「冬雷」で日本推理作家協会賞候補となる。その他の著書に「鳴いて血を吐く」「雪の鉄樹」「お葬式」「蓮の数式」がある

主な登場人物:

代助 親に捨てられ園生活、小学5年11歳の夏目代助は、千田家の養子として迎えられ、鷹匠として鷹小屋の管理を任される。小学校から高校まで真琴と同じクラス。生徒会長。真琴と恋仲に。弟の翔一郎が行方不明になって犯人扱いされ、18歳で魚ノ宮町を飛び出す。

千田雄一郎
妻 京香
息子 翔一郎
娘 結季

鷹匠及び千田塩業を経営。翔一郎が生まれると、翔一郎が5歳になったら鷹匠にとして、代助を追い出しにかかる。
・京香 代助に温かだったが、翔一郎が生まれ、行方不明後は代助を犯人として冷たく。
・翔一郎 代助をしたい、代助も可愛がるが、代助とのいいあい後、行方不明に。町中、代助が犯人説に。
・結季 翔一郎がなくなった後の娘。

加賀美倫次
妻 貴子(没)
娘 真琴

鷹櫛神社(魚ノ宮町の氏神)の宮司。千田雄一郎の2つ違いの弟。入り婿神職。雄一郎が品行方正、いつも冷静に対し私はお調子者と。
・貴子 倫次を迎えるまで雄一郎といい仲であった。
・真琴 母親の遺言で鷹櫛神社の巫女として生きることを運命づけられている。代助と同い年。

三森龍
妹 愛美
(まなみ)
父親

町でただ一軒の酒屋の息子。妹思いの不良の卵。
・愛美 学校での成績良くない、要領も良くない、気が利く方でもない。しかし素直さ、一途さを有していて代助一途。
代助に薬を飲ませ、警察に通報された後、首を吊る。

浜田 郵便局長。氏子総代。
旭穂乃花(あさひ・ほのか) 「スーパー旭」の娘。一つ下の学年、愛美と同級。リーダー格の女の子。愛美を「ウザい」といじめる。
戸川

大阪府南部の山の中で「ホーク・アイ」という小さな会社社長。鷹匠として、都会での害鳥駆除が主な仕事。
千田家を逃げてきた夏目代助を雇う。

補足:魚ノ宮町は海辺の町、冬雷の鳴る町。怪魚と巫女の町。鷹櫛神社縁起には、鷹匠と巫女と怪魚が出てくる。千田家と加賀美家のご先祖様の話。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 冬雷が鳴る日本海沿いの魚ノ宮町。「冬雷閣」と呼ばれる館に住む、塩業で財を成した千田家の養子となった少年・代助は、千田家とともに町を守る神社の巫女・真琴と恋に落ちる。幸せな日々を過ごしていたが、悲劇が起きてしまい…。

読後感:

 小さな魚ノ宮町は冬雷閣と鷹櫛神社を氏子達が崇め別格扱いで成り立っている。その冬雷閣に鷹匠と千田塩業の跡継ぎとして養子に迎えられた代助は、赤ちゃんの時に捨てられた捨て子。両親ができたこと、鷹匠として“緑丸”を訓練することの喜び。そして冬雷閣と鷹櫛神社は一心同体として巫女の加賀美真琴との仲で喜びの絶頂にあったが、翔一郎が生まれたことにより、その座をおい落とされ、単なる使用人として扱われることに怒りを覚える。

 翔一郎を可愛がったけれど諍いが起き、途中で別れた後、翔一郎が行方不明となる。
 かくて町中から犯人扱いを受け、真琴と町を逃げたそうとするも、ご破算のハメに。

 翔一郎の死、そして犯人捜し、ストーカーまがいの三森愛美の自殺、愛美の残した日記の謎、冬雷閣と鷹櫛神社の兄弟のあき列、真琴の母親が真琴に遺したビデオの存在、代助が町を出て翔一郎の葬儀に12年ぶりに帰ってきた代助を待っていた諸々の疑問が次々と表面化してきて、物語はクライマックスへと滑り込んでいく。
 親と子の絆、複雑な男と女の仲、捨てられた子の親への気持ちなど盛りだくさんな展開に翔一郎殺しの犯人捜し、愛美の日記や遺書に隠された謎、三森龍の最後の賭けとミステリー性も満載。


余談:

・真琴の「もう、諦めて」「・・・どちらを選んでも間違えた。」という言葉。
 愛美の遺書にある「――真琴さんはずるい。」という言葉。
 二人の言葉の意味がこの物語のおどろおどろしさ、この狭い町に縛られて生きる世界を表わしていた。
・冬雷とは:夏の雷は空の雲から落ちてくるのに対し、冬は地面から生える。「このあたりは夏より冬の雷の方が多いの。で、雷が鳴ったら雪になる」と。
 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
戻る