寺地はるな 『希望のゆくえ』


              2022-09-25


(作品は、寺地はるな著 『希望のゆくえ』    新潮社による。)
                  
          
  
  
初出  yom yomvol.5358
  本書  2020年(令和2年)3月刊行。


 寺地はるな
(本書による)

 1977年佐賀県生まれ。 大阪府在住。 2014年「ビオレタ」で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。 他の著書に「わたしの良い子」、「大人は泣かないと思っていた」、「正しい愛と理想の息子」、「夜が暗いとは限らない」、「架空の犬と嘘をつく猫」などがある。

主な登場人物:

兄 柳瀬誠実(まさみ)

「スワロウ製菓」勤務の34歳。 弟に対し、「俺をばかにしている」「冷酷で不気味」と思っている。
母から希望のマンションの鍵を渡され、訪ねていき・・・。
希望の行方を捜し、人となりを訪ね歩く。

弟 希望(のぞむ) マンションの管理会社勤務、28歳。 市外のマンションに一人暮らし。
律儀で几帳面。 一昨日仕事中に突然いなくなり、・・失踪。
両親

父親は世間体を気にする親。
息子に直接言わず、母親に命じてやらせる。
そんな母親も、父親をだますすべを持ち、希望はやさしい子と。

和歌

柳瀬誠実の妻、36歳。 謙遜というものしたことがない、自信あふれた、美しく健やか。 広告会社に勤務。男がいる。
誠実は、かって和歌の父親の部下。 倒産後、誠実の再就職を世話したことを、和歌は「忘れるな」とこともなげに打ち込む。

山田由乃(よしの) 「スワロウ製菓」勤務。高校生の頃、希望と付き合っていた。
伊沢 由乃が勤める会社の営業部の社員。 由乃は伊沢を補佐。
有沢慧(けい) 柳瀬希望の会社の社員。 妻帯者。
美咲 有沢慧の補佐。 有沢慧は美咲を重宝に利用するも、思わぬ反撃に。

小平敦子(あつこ)
娘 実花子
(みかこ)
息子 武流
(たける)

大阪にある「のばら保育園」の園長。
夫は愛人の住む家に、ずっと帰ってこない。 敦子は離婚届は拒否。 かって柳瀬希望が1年ほど通っていた。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 弟が放火犯の疑いがある女と姿を消したらしいと母から連絡があった。 僕は、彼と交流があった人物に会いに行ったが、弟の印象はそれぞれまるで異なっていた…。 人生の「希望」とは何かを問う、話題の作家が拓く新境地。

読後感:

 柳瀬誠実(まさみ)という兄が、弟の希望(のぞむ)を探し求め、関係する人たちから、希望の人となりを訪ねるも、どうも希望の姿が定まらない。 それぞれの人が希望をどのように見ているのか、読者にとっても像が結べない。

 誠実自身の夫婦関係も、妻は自分が出張の日を狙って男を連れ込んでいる。
 弟は、誠実のことを「兄ちゃんは見て見ぬふりが得意だよね」と評す。
 弟の行方を、高遠という興信所崩れの男に、弟が、火事を起こして「一緒に逃げて」と言う重田くみ子と逃げたという行方を探す依頼をする。
 行き着いた先は、かって過ごしたことのある大阪、「のばら保育園」の跡。

 そこでの希望とくみ子の夫婦生活(?)の様子に、希望の人間性が表されている。
 さて、本作品の表題「希望のゆくえ」の“希望”が弟の希望(のぞむ)かと思いきや、あくまでも「希望のゆくえ」と言うことだったことに、そういうことかと。

余談:

 寺地はるなという作家の作品をこれまで何冊か読んでいるが、人の生き方を描写した作品が多いように思う。 今回の柳瀬希望という弟の人物像が捉えどころなく、最後の重田くみ子との生活で、くみ子のどういうところに感銘を受けたのかに、希望の姿が垣間見れた気がする。 
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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