天童荒太著 『孤独の歌声』
 




               
2012-02-25



(作品は、天童荒太著『孤独の歌声』  新潮社による。)

            
    

 本書 1994年(平成6年)1月刊行。 第6回日本推理サスペンス大賞優秀作受賞作品。

 天童荒太(てんどう・あらた):(本作品の記述より)

 
1960年愛媛県生まれ。明治大学文学部演劇学科卒。1986年「白の家族」で第13回野生時代新人文学賞を受賞。1993年、「孤独の歌声」で第6回日本推理サスペンス大賞優秀作を受賞。人間心理のヒダを掬いとる鋭いセンスで、我々のすぐ隣りに起こりうる狂気と恐怖を演出する才気あふれる新星である。 

 主な登場人物

朝山風希(25歳) 多摩川に面した署の新人女刑事。マンションの3階に一人住まい。何かを隠していると河原崎刑事は感じている。
刑事

・河原崎刑事 コンビニ連続強盗を担当する。朝山風希の上長。
・赤松秀樹刑事 朝山風希と付き合っている。

芳川潤平(19歳)

小さな音楽事務所に籍を置きバイトでコンビニの店員をしている。曲と詞を作りつつ歌を歌いたい想いでレコード会社に送っているが音沙汰ナシ。
コンビニのバイトでコンビに強盗に襲われる。
・高 コンビニの相棒。中国からの留学生。

木崎京子

朝山風希の隣に住む女子大生。バイトでクラブのホステス。
もしいなくなったら必ず探してと風希に言う。


(松田隆司 33歳)

街中にいると特に特徴もなく記憶に残らないような人物。
母親が父親を刺して離婚、男も結婚するも妻の頬に穴を開けて離婚。一人暮らし。真実の愛を求めている。


物語の概要:図書館の紹介文より

 
 凄惨な連続殺人が発生した。 独り暮らしの女性達が監禁され、全身を刺されているがレイプの痕はない。 被害者の一人が通っていたコンビニでの強盗事件を担当した女性刑事は、現場に居合わせた不審な男を追うが、突然彼女の友人が行方不明に…。 孤独を抱える男と女の、せつない愛と暴力が渦巻く戦慄のサイコホラー。

読後感:

 節ごとに主人公 (語り) ががわたし (朝山風希)、おれ (潤平)、男 (松田) と交互に変わり、 心情を含め語ることで展開されるため、 それぞれの気持ちが表されていく手法を取っている。
 二つの事件 (コンビニエンス ・ ストア連続強盗と女性の連続誘拐猟奇殺人事件) が絡み合って連続強盗を追う担当の女刑事 (朝山風希) が猟奇殺人のターゲットに狙われているサスペンスもあり緊張感がある。 また朝山風希の人物の魅力と共に、何かを隠して苦しんでいる面も持ち合わせそれも次第に明らかになってくる。

 出版は後の作品になるけれども感動作品であった「永遠の仔」の主人公たちが心の中に耐えているものを持ちつつ生きている姿をここでも見る感じである。
 ただ猟奇殺人の描写の箇所はあまり好きではないので選考者の評論では連続殺人事件の犯人の異常さが十分に書かれていないとの意見もあったらしいがそんなことは無いと思った。

  

余談:
 NHKのラジオ「著者に聞きたい 本のツボ」で平松洋子さんの「野蛮な読書」について日頃感じていたことを耳にした。すなわち、”本が本を連れてくる”ということ。
 つぎにどんな本を読もうかと思っていると作品中に関心をひく作品が出ていたり、解説での話題とかにひかれたりと、次々と浮かんでくるのが楽しい。そんなことを言う著者の作品も是非読んでみたいと思った次第である。
  
背景画は物語の中の主要な人物のストリートミュージシャンをイメージして。

                    

                          

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