物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
北海道・大沼湖畔に佇む2つの施設。そこでは様々な事情で親元を離れた少年少女たちが、自立のため職員たちと一つ屋根の下で暮らしていた。施設を束ねる藤城遼平の娘・ゆきは札幌の病院で働く新人理学療法士。偶然、父の教え子である摩耶が歌う動画を見て…。
読後感:
藤城遼平という児童自立支援施設の院長は、野々村拓弥に言わせると「風変わりな院長、変な大人の印象」。藤城が言うには拓弥のことは「自分と似ているところがある気がする。自分がどう思うかより、みんながどう思うか、まず考えるんだよな」と。
押さえつけるより、みんなが出来るだけ言いたいことを言い、楽しく暮らせるようにと心を砕く。奈良での摩耶の経歴は言葉に出来ないほどの目に会っているが、そんな彼女が藤城のことを「パパリン」呼ぶように。
その摩耶はギターを藤城のギターから興味を持ち、小林に教えられてYouTubeに曲を流し、ライブに出演するように。そんな姿を藤城の娘ゆきがのぞきに行き、兄の拓弥と三人でラーメン屋に行くことで接近する。
しかし摩耶はパパリンの娘ゆきのことを、白の世界に住むのと、黒の世界に住むのと住む世界が違うと避ける。そしてゆきと拓弥が付き合っていると知ると、拓弥に「冗談はやめて」と。
摩耶と拓弥の兄妹は互いに助け合い、奈良での虐待、小樽での養父による摩耶への性的接触を養護する仲の存在である。
児童自立支援センターは中学を卒業し、高校進学となれば退院となる。摩耶も拓弥も、退院後は、摩耶は店で働きながらのライブ活動、拓弥は自動車整備工場で働く。摩耶は養父から居所を隠しながらも、母親への思いをかけるも、母親の、養父とのつながりを切れないことにつれない反応をしてしまう。
ラスト近く、園長として、思い出を沢山もって自立の道を進んで欲しいと願っていた藤城が、娘のゆきが、園を卒業した野々村拓弥と結婚することの挨拶で大沼を訪れたいとの話に、妻の久美子からは「父親として拓弥のことを、責任を持って見極めてください」と責め付けられ、日取りをなかなか答えられない胸の内に、果たして拓弥とどのように向かい合えたのか。親の愛情を受けてこなかった拓弥は、こんな自分が親になっていいんだろうかと悩む。
物語は終盤になって思いがけない展開が待っていた。
学園の院長室で職員達に拓弥と娘のゆきの結婚話、摩耶の紹介をしていたときに突然現れた元寮長の代田の挑発に起きたハプニング、そしてその後の展開で一気に緊迫と藤城自身の生き様の反省と、ゆきの思いがけない行動。
親の愛情がいかに子供の成長に影響を及ぼしているのか、読書しながら反省の時を持つ。
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