<主な登場人物>
手島修三 |
警察庁に入り、警視庁公安部外事課に出向。さらに外務省に出向、日本大使館一等書記官としてロンドンにも。父親はロンドン大学の有名に政治学の教授だった(2年前になくなる)。 |
《リヴィエラ》 |
謎の人物。名前は田中壮一朗と言われる。 |
ノーマン・シンクレア |
1948年ダブリン生まれ、ショパンコンクールで金賞、17歳でカーネギホールデビュー。2年前そういう生活を終える。元MI6(SIS
スパイ活動)メンバー。72年東京のホテルニューオータニの植え込みに資料を届ける指令を受ける。《リヴィエラ》の顔を知る人物。ジャック・モーガンに秘密を知らせる。
シンクレア三十そこそこ、ジャツクが子供の頃、ピアノのレッスンの合間に自宅でふたりボクシングをして過ごす仲。
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ダーラム侯爵 |
ノーマン・シンクレアとは幼い頃共に育つ。元MI6のメンバー。 |
レディー・アン |
中国の女スパイ。かってシンクレアとダーラム侯がともに狂った女。ダーラム侯爵の奥方に。 |
イアン・パトリック・モーガン |
ジャック・モーガンの父。1978年3月、誰かを知らずに、指令でウー・リャン暗殺事件を果たし、姿をくらます。そして81年パリで何者かに射殺される。 |
ジャック・モーガン |
北アイルランドアルスター出身のIRAテロリストメンバー。7年勤めたあとテロ行為を廃業し、殺し屋として《リヴィエラ》を撃つ仕事につく。 |
ウー・リャン |
中国からの政治亡命者。72年香港に中国政府の極秘資料持ちだす。78年に暗殺者に殺される。一部の人間だけが亡命事件の真相を知っている。 |
ゲイル・シーモア |
IRA参謀本部の幹部、顧問。81年にダブリンで誘拐され、北アイルランドに連れ戻される。ベルファストに護送されたシーモア、「私はリヴィエラを探しているんだ」と。 |
ギリアム |
イギリス外務省事務次官からMI6の長官に。某伯爵家の嫡出。 |
ケリー・マッカン
《伝書鳩》
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ワシントン・ポスト記者、正体はアメリカCIA。中国通。ジャック・モーガンと組んで、《リヴィエラ》を撃つ行動に。 |
ジョージ・F・モナガン |
スコットランドヤードC1(殺人課)、C13(対テロ班)、CID(犯罪捜査課)の全課のボス、警視監。 |
キム・バーキン |
5年前までモナガンの部下。今は《MI5》に。 |
M・G |
M&G商会の人物。(《MI5》)、キム・バーキンの上司。 |
サラ・ウォーカー |
CIAロンドンステーションのメンバー。ケリー・マッカンの彼女。 |
ウー・リーアン |
ウー・リャンの娘、ジャック・モーガンの恋人。 |
シドニー・ジェンキンズ |
C13(テロ対策班)の警部。 |
◆補足説明:フリー百科事典ウィキペデイアや本書から整理◆
アイルランド共和国:通称アイルランドは北大西洋のアイルランド島に存在する立憲共和国製の国家。首都はアイルランド島中東部の都市ダブリン。
アイルランド島の北約6分の一の北アイルランドは英国領。
アルスター地方:アイルランド島の北部の地方。9つの州からなり、アントリム州の最大の都市がベルファスト。
・ IRA アイルランド共和国軍暫定派(BRITS OUT運動)
・ スコットランドヤード(ロンドン警視庁)
C1 (殺人課)、C13(対テロ班)、CID(犯罪捜査課)など。
特殊部門として特別局(警視庁公安部 逮捕権のないMI5の尻にくっついて逮捕だけを代行する)がある。
・ MI5 (セキュリティサービス) イギリス諜報機関のひとつ。イギリス情報局保安部。
イギリス国内の治安維持に責任を持つ。所管官庁は内務省。
司法警察権は有さず、ロンドン警視庁(スコットランドヤード)が担当。
・ MI6(SIS)イギリス諜報機関のひとつ。イギリス情報局秘密情報部。英国国外での人による諜報活動を主な任務としている。組織としては外務省の管轄であるが、外務大臣だけでなく、首相と内閣府の合同情報委員会(JIC)へも報告が行われ、これらの指揮を受ける。
<物語の展開>
CIAの『伝書鳩』とともに、父の仇である『リヴィエラ』を追っていたジャック。複雑怪奇な諜報機関の合従連衡。二重・三重スパイの暗躍。躍らされる者たち。味方は、敵は誰か。亡命中国人が持ち出した重要書類とは?
ジャック亡き後、全ての鍵を握るピアニストは、万感の思いと、ある意図を込めて演奏会を開く。運命の糸に操られるかのように、人々は東京に集結する。そして…。
<読後感>
相変わらずというか、なかなか複雑なストーリーで、特にアイルランドやロンドンといった外国が舞台になっているだけに、場所の名前、また人名や組織の名前など、ある程度歴史を知っていないとぴんと来ないのが難点。一般にこういう場合登場人物のリストとか地図などがあるのに、「晴子情歌」の時と同じく全くない。
それでも途中から次第に状況が理解できてくると、一筋縄ではいかないストーリーの展開に謎が深まるばかり。 主人公も次第に変化し、クライマックスでは日本を舞台に謎が解明されていく。
なかなか読みこだえのある作品である。 知らないことがあって、インターネットで調べながら理解していった。 補足資料として掲げておいた。
それにしても、高村作品に出てくる人物は単にスパイ小説ではなく、人間の情とか、心に響く何かを秘めていて、軽く読み飛ばしてしまう作品ではないところに素晴らしさがある。
ジャック・モーガンと《伝書鳩》のケリー・マッカンとの友情、G・Mとキム・バーキントとの結びつき、ノーマン・シンクレアムと古い友人であるジャック・モーガンとの思いなど、特にお互い異なる年月を過ごしたシンクレアとジャックが昔と同じように顔をあわせた後、「サー・ノーマン」と呼ぶのに対し、「サーは要らない」と言う、そして雑踏の中へ去るシンクレアが狙われているのを心配してジャックが人込みの中を追っかけて「ノーマン!」と叫ぶところなどジーンとくる。
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