高村薫著『黄金を抱いて翔べ』





                2009-09-25


 
 (作品は、高村薫著 『黄金を抱いて翔べ』  新潮社による。)



                    
   

 発出:平成二年(1990)12月新潮社より刊行。
 本書は平成6年(1994)1月発行
 1990年に第三回日本推理サスペンス大賞受賞。

  
高村薫:

 1953年大阪生まれ。国際基督教大学卒。処女作「黄金を抱いて翔べ」(90年)で第三回日本推理サスペンス大賞を受賞。
 意欲的なテーマの選択、徹底した取材による細部の真実性、緊密な構成と豊かな人物造型から生まれる硬質なロマンティシズム―――氏の真骨頂を発揮しつつ、最新作では好きな登山と大都会に発生した凶悪な連続殺人を結びつけ、本邦初の本格的警察小説に挑戦している。

 

主な登場人物:

幸田弘之 北川とは同じ大学で10年の付き合い。半年前に関西に移ってきて勤め先は倉庫会社、住まいは吹田。 人間のいる土地は全て嫌いという、来年30歳。 子供の頃の暗い記憶にさいなまされている。 モモへの思いが深い。 昔かかわった青銅社の追跡からも逃れる必要あり・・・。
北川浩二 千葉船橋出身、大阪に8年、運送会社勤務。 幸田を誘い、住田銀行の金塊強奪を計画する。おっとり系の奥さんと子供とマンション暮らし。 細心の心遣いと大胆さ、冷徹さを併せ持つ男。
北川春樹 北川浩二の弟。 高2の半ばにズッコケ、グラツク春樹を北川が大阪に呼出し、アルバイトで幸田と同じ倉庫会社に。 バイクに凝っている。
野田 オフコンのアフターケアを仕事にするサラリーマン。 ボルボを乗り回す。
モモさん 爆弾のエキスパート。 東京生まれの韓国人、いわくつきの男、公安、北、南から追われている。幸田としか心を開かない。
ジィちゃんこと岸口順三

エレベータサービス会社勤務。住田銀行にも出入りしている。



物語の展開

 銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ! 六人の仲間で始めた計画には不測の出来事がつぎつぎに起こってくる。

読後感

 高村薫作品の初期作品であるが、今までに「マークスの山」から「新・リア王」までを読んできて、初期作品に戻ったということで、著者の作家としての出発点を知る上で興味深かった。 やはりこの著者の原点のようなものが感じられる、内容のあるものが後に残った。

 まずディテールの素晴らしさと迫力、そして人の生き方のむなしさというか背後にくっついている諸々を背負った人物像がいい。
 感動作「レディ・ジョーカー」の仲間達が再現されたようで、わくわくしながら読み進んだ。 泥棒仲間であるが、何故か応援したくなるような人情を持ち合わせていたり、非常さの下に思いやりが隠されていたり、やはりこの著者は好きな作家の最右翼の一人だ。
 解説(長谷部史親)の経歴紹介も興味のわくもので、作品の根底にあるものがかいま見られておもしろかった。


  

余談:
 ついに高村薫の最新小説「太陽を曳く馬」を読み始める。 今回は憧れの合田雄一郎がどのように事件に取り組むのか、そして「晴子情歌」「新・リア王」の福沢彰之がどういう役回りで絡んでくるのか興味津々である。はたして今度は絵画のことと、宗教のことが深く関わってきていて難解そうな予感。 来月取り上げたいと。
 背景画は、銀行の大金庫フォトより。

                    

                          

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