高村 薫著 『晴子情歌』 






                  
2009-07-25




 (作品は、高村薫著 『晴子情歌』 新潮社による。)

            


 

 初出 2002年5月発行

 高村薫:

 1953年大阪生まれ。国際基督教大学卒。処女作「黄金を抱いて翔べ」(90年)で第三回日本推理サスペンス大賞を受賞。意欲的なテーマの選択、徹底した取材による細部の真実性、緊密な構成と豊かな人物造型から生まれる硬質なロマンティシズム。


<主な登場人物>
 

野口晴子
(結婚後 福澤)
弟妹:
(晴子
15の時)
  哲夫(11
  幸生(9
  美也子(6
夫 福澤淳三

野口康夫、富子の娘。

野口康夫
(妻 富子)
野口家:
長男 忠夫
長女 早くに没
次女 リツ(小樽に嫁ぐ)
次男 昭夫
三男 康夫
四男  郁夫

野口家の三男。実家 筒木坂(どうぎざか)
英語教師、退職しては漁業に従事するも、小説家を目指したり、政治に対する考えを持っている。富子に負うところ大きく、富子亡き後、鰊漁に従事する。
岡本富子
(結婚後 野口)
長女 房子(8つ上)
次姉 民子(6つ上)

岡本芳國と初音の三女(上の二人は嫁ぐ)。
芳國は深川で木材の商家の4男、東京電気川崎工場経理課勤務だったが、明治27年、岡本家に婿養子ではいる。岡本家は下宿屋で初音が切り盛りしていた。(at本郷)
大正2年 第一高女卒→見合いして大宮の醸造元の家に。
大正3年 看護婦養成所を出て市ヶ谷の開業医と自由結婚。

福澤彰之
姉 美奈子

福澤淳三と晴子の息子。
姉 美奈子は淳三が外で作った女の子、
彰之は福澤栄が晴子に手をつけて生まれた子。

福澤本家 野辺地
当主 勝一郎
妻 キヨ
・姉 初子
 婿養子 敏郎
・兄 栄
 妻 睦子
・弟 啓二郎
 相手 範子
・次女 和子
 夫 徳三
勝一郎の弟
 淳三

◇分家(米内沢)
 宗助
 妻 弥生
 清乃
 春乃

勝一郎、衆議院議員3期目の56歳。
◇栄 東京帝大卒、大蔵省に2年勤め、転じて勝一郎の秘書となる。後自民党代議士、衆議院議員、自治大臣に。

◇福沢啓二郎 東京帝大法科に在、栄とそりあわず。野辺地を飛び出す。後外交官となり、外務官僚となる。
・福沢公子(義姉)  東大法学部3年(21歳)読書家         Cf 彰之18歳
・光久
◇福沢徳三/和子
・徳三 八戸徳沢水産 伯父、
  長男 総一
  次男 貴弘
  長女 喜代子
  三男 遙(彰之より4つ年上)
 唯一大学に行かず、12歳より海に出る。内米沢の彰之らの所によく遊びに来る。



<物語の展開> 
 
 北洋漁船に乗る青年のもとに、母・晴子から届き始めた長大な手紙。自らの半生を告白するその手紙は、青年を激しく戸惑わせた。母と子の永遠の謎に挑む長編小説。

<読後感>

 これが「マークスの山」、「レディ・ジョーカー」の著者かと疑った。しかも高村薫という作家がうかつにも女性とは知らなかった。それで先の作品が紡ぎ出されるとは驚きである。人物の描写、バックグラウンドそれが実に硬派的だから。
 全く別人ではないかとも、何が著者の変化をもたらしたのか、そんなところを知りたくなる。

 さて、この「晴子情歌」であるが、はっきり言って実に読みづらい。 現実と過去が入り乱れているのと、人物の関係がさっぱりわかりにくく、時代の流れが読みづらい。
 確かに昭和8,9年の辺りのことが記されているようだが、一体何をテーマにしているのかが判らない。
 何故読み進んだか、実はこの作品の後に続く「新リア王」なるものが、本作品に出ている彰之が主人公となるようなので、その前に読んでおきたかったから。

「新リア王」では福澤栄という政治家が出ているようだが、その福澤栄のことも本作品に出ているが、この青森での福澤家の位置づけ、家族の内情、そして福澤家に子守としてやとわれるに至った晴子が福澤淳三の妻になり、また福澤彰之なる人物の素性、12歳で家を飛び出し、常光寺の小僧となりインド洋のマグロ漁にでることとなるといった背景を知ることで、次ぎに続く「新・リア王」が理解できると思えた(これは「新・リア王」を読んだ後で感じたことである)。


   


余談1:
 最初「新・リア王」だけにしようかと思ったが、やはり「晴子情歌」がバックにないと成り立たないとの感じがして、追加した。

 背景画は青森常光寺のフォトイメージ、昔の面影はないのでは?。

    
            
 

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