高木彬光 『人形はなぜ殺される』



              2021-10-25


(作品は、高木彬光著 『人形はなぜ殺される』    光文社文庫による。)
                  
          

 
初出 1955年11月「書下し長編探偵小説全集7」として、大日本雄弁会講談社より刊行。
 本書 2008年(平成20年)2月刊行。

 高木彬光
(たかぎ・あきみつ)(本書より)

 1920年青森県生まれ。京大工学部卒。’48年に江戸川乱歩の推薦による「刺青殺人事件」でデビュー。’49年「能面殺人事件」で探偵作家クラブ賞を受賞。’95年逝去。

主な登場人物:

松下研三

探偵作家。もと捜一課長松下英一郎の弟。神津恭介は友人。

神津恭介
(かみづ・きょうすけ)

東大医学部法医学科卒、現大学の助教授、35歳独身。
医学博士、理学博士二つの学位を持つ。

青柳八段 松下研三の酒友。

中谷讓次
妻 ゆみ子

新宿駅東口の「ガラスの塔」のマスター。歴史に残る大魔術師フーディニエの再来と言われたことも。
・ゆみ子 「ガラスの塔」のマダム。

水谷良平

福徳経済会専務理事、35〜6歳。日本巌窟王の異名の持ち主。
15年前綾小路家の書生のような仕事をしていたが、春彦子爵の怒りを受け放逐された。

布施哲夫 水谷良平の秘書。
京野百合子 綾小路元子爵の落としだね。福徳経済会新宿支店勤務の一介の女事務員、27〜8歳。

綾小路実彦(さねひこ)
長女 滋子
(しげこ)
次女 佳子
(よしこ)
三女 典子
(のりこ)

国会議員、54〜5歳。
・滋子 精神分裂症で沢村病院に入院中、27歳。
・佳子 水谷良平の婚約者。
・典子 

杉浦雅男(まさお) 本職は詩人? まるで寄生虫のような人、人の秘密をタネに、ゆすりのようなことをして生きている。毒舌家。
沢村幹一(かんいち) 沢村精神病院の副院長、41〜2歳。
高川警部 捜査本部の捜査主任。

物語の概要:(ブログ 300booksより)

 衆人環視の中で、施錠されたガラス箱から突如消えた“人形の首”。 その直後の殺人現場には、無惨な首なし死体と、消えたはずの人形の首が転がっていた。それは名探偵・神津恭介への挑戦状なのか…。

読後感:

 純粋な犯人捜しの推理小説である。新宿液東口にある大魔術師中谷讓次の「ガラスの塔」で行われる魔術に端を発し、第一幕では成城でのギロチンで首を落とされた女の死体が。しかし首がない。さらに第二幕では水谷良平が魔術会の会員を興津の止水荘に招き、そこで綾小路の次女佳子が東海道線の列車に轢死させられるという殺人が。
 
 有名探偵の神津恭介は、今回に限っては形無し。 その東海道線の「月光」に乗り合わせていた。そしてなすすべ無しの状態で翻弄される。
 ところで、途中著者から読者に二度にわたり、犯人は誰かの問いかけがなされる。

 どうも怪しそうなのが、中谷譲次、水谷良平、沢村幹一当たりが考えられる。もう一人の怪しい人物杉浦雅男がいるが、実は彼は何かを掴んでいるらしく、黒い手帳を遺して第三幕で殺されてしまった。
 神津恭介はこの謎の手帳からヒントを入手し、解決した後の松下研三に説明をしている。

 題名の「人形はなぜ殺される」に秘められた言葉。これは杉浦の黒い手帳に記された言葉でこの事件の真犯人を解く鍵に。
 他にも、魔術師の公理、言葉「入らなければ出られない」「右手を出されたら左手を見よ。あるといわれたらないと思え。ないといわれたらあると思え」がこの物語に重要な示唆を与えていた。
 魔術に関するミステリー小説には脱帽。それにしても杉浦なる人物の洞察力は恐ろしい。


余談:

 高木彬光作品の読書は初めてだが、本作品「人形はなぜ殺される」は1955年11月に発表されたもの。本書のものは、入念に加筆・訂正された校正用の内容で、見出しも大幅にわかりやすくなっている模様。
 本格的な推理小説ものよりは、ミステリーも含めた読者に感動をもたらすものとか、感情移入できるものの方が好みだけれど・・・。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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