物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
父の古い友人に招かれた「私」は、別荘に到着した翌日に一彦とともに向かったヒョウタン池で、池の精と名乗る少女に出会う…。1952年夏、六甲で出会った3人の少年少女。文芸とミステリが見事に融合した傑作。
読後感:
東京に出張してきた浅木さんを、父が家に招いて歓待したとき、「夏休みになったら、六甲山の小さな別荘に来ないか」と、私(進)に言ったことで、ひとり別荘に出向き、同い年の一彦と過ごしたことで出会った、やはり同い年の倉沢香という、不思議な少女との淡いが、純情心溢れる交流が、みずみずしい文章と共に展開する昭和27年(1952年)の夏の物語。
その中に、昭和10年、進の父と一彦の父が、小芝一造翁の秘書役として海外視察旅行に行った時の情景が挿入され、そのベルリンで出会った相田真千子なる女性が登場していて、後々の展開に伏線として挿入されている。
進、一彦、香の三人の交流の様子は、実に文芸作品の香りがしていて、ついついどっぷりと物語の中に浸かってしまっていたが、香の少々複雑な境遇を知り、義母からの扱いに抗しながら逢瀬を重ね、やがて夏休みが終わりに近づくと、果たして香とふたりの関係はどういうことに発展するのか。
一方で、突然殺人事件が起き、今まで脇に追いやられていたかに見えた事柄が、入れ替わって、あぁそういうことだったのかと、読み返したくなってしまう。
鮮やかな組み立てに感動さえ。
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