(作品は、遠藤周作著『深い河』講談社出版による)
「深い河」は、作者70歳の時の、集大成の作品といわれている。 ・遠藤周作「深い河をさぐる」は1994年12月刊行(集英社) |
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◇インド仏跡ツアーに参加する主な登場人物たち
(補足) |
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物語の展開:
インド仏跡訪問ツアーに集まった旅行者は、それぞれの人生で負う荷物に応じた目的があった。その人達と添乗員の人物像、背景が描かれながら、お互い絡み合い、インドという地に存在する混沌とした姿を受け入れる聖地ガンジス河での情景が展開していく。時にガンジー首相暗殺事件が起こり、その影響も受けながら。 読後感: いままでは仕事一筋でやってきて、妻のことなど空気のように思ってきた磯辺、そんな妻が癌であと3ヶ月の命であることを知り、今際の譫言(うわごと)で、遺した言葉「必ず生まれ変わるから、この世界の何処かに。探して、・・・わたしを見つけて・・・約束よ」に、考えてもいなかった転生のこと、感じてもいなかった妻がこれほどまで自分のことを思っていてくれたことに驚く磯辺は、ひょっとしたら自分のことかも。 成瀬美津子のケースでは、自分の生き方に大きく影響を与える大津の存在に、いったい自分は人生で何を探し求めているのか、インドツアーに参加することでおぼろげながら悟ってくる姿に、こんな人もいるかもと。 人それぞれ、死に対してどういう風に立ち向かっていけるのか、神とはいったいどういうものか、人はどう生きることで満たされるのか、いろいろなことを考えさせる小説である。
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◇印象に残る言葉: この「深い河」という小説に関連し、「深い河をさぐる」という対談集が集英社から出ている。その中で”インドは何を教えてくれるのか?”と題する本木雅弘(モッくん)との対談で遠藤周作が語っていることがある。 若い時は銀行家は銀行員らしく立居振舞をし、学校の先生は学校の先生、また父親は父親の顔を家庭で持たなくちゃならない。若ければ若いほど、そういう「生活の顔」を持たなくちゃならない。僕らくらいの年齢になると、生活というものが逆に薄くなって、人生しか残らなくなりますから。だから「生活の顔」じゃなくて、「人生の顔」をしたいと思う。とにかく死を迎えるのは、本木さんよりずっと早い。そうすると、インドへ行ったことで「生活だけじゃないぞ」という気持ちが強くなることは、とてもありがたい。インドでは生活と人生が一緒になっている。日本では生活しかない。日本の多くの人は生活だけがすべてという考えです。 |
余談: こういう小説を読みたい年齢になったなあという心境である。空は晴れ、からっとした空気の、涼しい風が吹き抜けていく木陰か、波の音を聞きながら、一人静かに読んでいたい。 |
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背景画は本書の表紙を利用。 |