住野よる著 『青くて痛くて脆い』








              2018-10-25


(作品は、住野よる著 『青くて痛くて脆い』    角川書店による。)
          
  初出 「文芸カドカワ」2017年4月号から2018年1月号に連載されたものを加筆修正。
  本書 2018年(平成30年)3月刊行。

 住野よる:
(本書より)
 
 高校時代より執筆活動を開始。デビュー作「君の膵臓を食べたい」がベストセラーとなり、2016年の本屋大賞第2位にランクイン。他の著書に「また、同じ夢を見ていた」「よるのばけもの」「か「」く「」し「」ご「」と「」」。よなよなエールが好き。
     

主な登場人物:

田端楓
<僕>

大学一年生(商学部)の時秋好寿乃に声をかけられ、二人で“モアイ”と言う秘密結社を立ち上げる。
秋好寿乃(ひさの)

政経学部、高校でサッカー、快活で誰とでも話せるタイプの人。純粋。

董介(ようすけ) 僕の友人。楓が”モアイ”を壊す意見に賛同、協力を約束する。
ポンちゃん 愛媛出身の女の子。董介が良い子と評価するモアイに所属するだけの子。
川原里沙 楓の後輩。バイト先の先輩。“モアイ”に入り参加している。
尋木ミア(たずのき) “モアイ”の三人目のメンバー。母親がイタリア人。
ヒロ と寿乃で立ち上げた“モアイ”を乗っ取ったリーダー。
女の子たちをはべらせている(ポンちゃん評)。

天野
<テン>

決まってイベントの司会をやっている。
コミュ力あるチャラっぽい人(ポンチャン評)。
脇坂 モアイの観察者。
恥や外聞を捨て、己の興味のためにだけ生きるはた迷惑な人物。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 大学1年の春、僕は秋好寿乃に出会った。誰より純粋だった彼女の理想と情熱に感化され、僕たちは2人で「モアイ」という秘密結社を結成した。それから3年、あのころの秋好はもういない…。青春の煌めきと残酷さを痛烈に描ききった青春小説。      

読後感:

 僕の人生におけるテーマは・人に不用意に近づきすぎないこと。・誰かの意見に反する意見を出来るだけ口に出さないこと。そんな僕に大学一年生の授業で隣の席に座って授業中手を上げて理想論を述べる彼女と運命的に付き合うことに。
「私、男友達といる方が楽だよね。色々気を遣わなくてもいいし」と何故だか。そんな二人が大学の4年間で、なりたい自分になるという理想を掲げ、“モアイ”という秘密結社を立ち上げ、広める努力をする。

 組織が大きくなり、秋好が忙しくなって僕との接触も減っていくと変容を遂げていくに“モアイ”に不満を感じてきた僕は友達の董介
(ようすけ)の協力を得て“モアイ”を壊しにかかる。 しかし、“モアイ”に潜入し、テンと付き合い始めた董介(ようすけ)に変化が。
 そして手を引くまでに。

 この作品、先に読んだ「君の膵臓を食べたい」を読んだ時の衝撃に比べ、今回の主題は意外。ただ、大学一年生の授業での僕と秋好寿乃との出会いシーンはなんだか自分の大学生活での初めての授業風景が思い出されてこの先の展開に期待が膨らんだ。
 主題は違ったとしても、僕の人生テーマは自分にも十分当てはまったし、組織が大きくなるにつれ、当初の思想が次第に変容していってしまうのは良くあることだし、ラストに向け、秋好と僕の方向はどうなっていくのかは興味津々であった。

 楓と秋好の対決は迫力がある。秋好の反省することを期待したていたのに、逆襲を受けた楓はキレて相手を傷つける発言をぶつける。
 川原からの情報で“モアイ”の活動停止を知り、秋好の様子を知った楓は秋好を傷つけたことに取った行動は・・・。

 読み終えて次の作品を手に取ろうと思っても、なんとなく読み返してみたくなり、楓と秋好の対決部分を再び開いてみる。
 自分が思い込んで相手を反省させ、変化させようと臨んだのに、反撃を受け、思わず怒りにまかせて本音をぶつける楓の姿。こちらの苦しみを理解されずに思わず「間違っていた」と発する秋好。この展開描写の意味合いは心理描写の妙を得ていて本当にグサッと胸に突き刺さる。
 その後の川原さんの言葉に楓は自分の間違いに気づく。その後の展開も未来を想像させるにふさわしい心に残る終わりかただった。 


余談:

「君の膵臓を食べたい」の主人公たちが高校生だったのに対し、やはり大学生から社会人を対象の主人公たちと年齢が上がった分、悩みはさすがに内面深くなっている。しかも男と女の感情の違いが会話の中に出ていて残酷とも思える表現が胸にグサットときた。 
背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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