物語の大筋:
主人公宇野富士男(32才)はどうしようもない男。 離婚後は何をするでもなく、横須賀で父親と姉の夫が共同経営する青果店(鉄筋2階建て)の屋上に、六畳一間のプレハブを建て、住みついている。 義兄の三郎とは犬猿の仲。 定職にも就かず、詩人と称して、車を動かして次々と女を引っかけては嘘八百を並べてその日を過ごしている。
性格は衝動的で、女が示す非常識で反社会的(?)な態度に対しては、怒りを露わにし、三人の女を殺害、死体を埋めたり、遺棄。 さらに子供を殺害し、一人の女には、自分でこそ手をくださなかったが、結果的に死なせている。また、レイプ事件も起こし、その家庭を滅茶苦茶にしてしまった。ただ一人の女には、死のうとしていたのを生きようと思わしめる行為をしている。
事件は、よけいなお節介から子供を殺害することになり、帰り際の小さな自転車接触事故から警察に知れることとなる。取り調べに対してのらりくらりと知らぬ存ぜぬで逃れているが、次第に証拠を突きつけられ、追いつめられていく。
しかし、きれいな青の朝顔『ヘヴンリー・ブルー(天上の青)』の縁で知り合った波多雪子(38才)は、他の女とは全く違う考え方をする女で、何故か素直に話せ、好意すら持つようになっていて、獄中での手紙のやり取りや、取り調べの一人の警察官に対する信頼感のようなものから、次第に死体を埋めた場所を明かしていき、死を意識し出す。
印象に残った所:
波多雪子と宇野富士男のやりとり
「あんたみたいなことを言う人、僕の周囲には一人もいなかったんだよ。もしいたら、僕の生活ももっと変わってたと思う」
「人のせいにするのはおよしなさいな。あなたがいい人ならあなたの手柄だし、あなたがろくでもない生活しているんなら、それはあなたの責任なのよ。」
「世間には、死んでくれたらいいと思われている人間が結構いるんだよ。僕もその一人だけど」
「それならそれでいいのよ」雪子は穏やかに言った。
「ひどい運命に会わないと立派になれない人っているのよ。だから、それはそれで意味があるんだわ」
「あんたはおもしろい見方するね」
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