雫井脩介著 『検察側の罪人』










              2018-11-25
(作品は、雫井脩介著 『検察側の罪人』    文藝春秋による。)
          
  
  本書 2013年(平成25年)9月刊行。

 雫井脩介:
(本書より)
 
 1968年、愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第四回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作「栄光一途」でデビュー。2005年「犯人に告ぐ」で第七回大藪春彦賞を受賞。主な作品に「クローズド・ノート」「ビター・ブラッド」「犯罪小説家」「殺気!」「つばさものがたり」「銀色の絆」「途中の一歩」などがある。
    

主な登場人物:

最上毅(たけし)
妻 朱美
娘 奈々子

東京地検刑事部の本部係検事。沖野が司法修習生の時のクラスの検察教官。北海道出身、市ヶ谷大学では根津の北豊寮に。
・長浜光典
(みつのり) 最上の事務官、30代半ば。
・朱美 韓流ドラマにはまっている。
・奈々子 大学1年生、ガールズバーでバイト。

沖野啓一郎

任官5年目東京地検刑事部に配属の”A庁検事”。最上から蒲田事件の担当を任される。
・橘沙穂
(さほ) 沖野の立ち会い事務官。

末入麻理 沖野と同期のA庁検事。公判部所属。松倉の蒲田事件の裁判での公判担当に。裁判員裁判。
最上の司法試験突破した仲間

・前川直之 市ヶ谷大学の同期。出身地も北海道。本当の人権派弁護士。
・小池孝昭
(たかあき) 大手事務所のパートナー弁護士。
・丹野和樹
(かずき)弁護士から衆議院に立候補、代議士に。
大物政治家高島進の娘婿に。闇献金疑惑で窮地に。

蒲田事件の捜査本部

・田名部管理官 23年前捜一に抜擢されたばかりで松倉を重要参考人として捜査に当たっていた。
・青戸警部 本庁捜査七係一癖ある刑事。
・森崎警部補 剛胆で真っ向勝負賀好きなタイプ。

松倉重生 蒲田事件の容疑者としてあがっている、63歳。沖野の取り調べで23年前の根津事件の犯人であること認めるも、蒲田事件については否認に終始。
弓岡嗣郎 競馬好きで、焼き鳥屋で酔って蒲田の事件俺がやったと矢口昌弘(まさひろ)に語り、詳細をしゃべる。しばらくして弓岡の姿が消えた。
諏訪部利成(としなり) 美術品や宝飾品から拳銃まで闇社会の取引に関わるブローカー。口の堅さ尋常でない。

小田島誠司
妻 昌子
(まさこ)

バッジつけて3年、小さな事務所の弁護士。蒲田事件に関して松倉重生の国選弁護人。
・昌子 事務を担当。

水野比差夫 「週刊ジャパン」の記者。北豊寮出身、大学時代の先輩。政治記者を務めていたが由季の事件後辞めて週刊誌の契約記者に。根津事件の関する「捜査線上に浮上した一人の男」の飛ばし記事を出す。
舟木賢介 裁判を傍聴するのが好きな「週刊平日」の記者。白川と仲良し。蒲田事件がらみに興味を示す。
白川雄馬 “白馬の騎士”の異名のベテラン弁護士。ボランティアで小田島に協力してくる。
 補足
<根津の事件>

23年前、北海道出身の中年夫婦(義晴と理恵)が管理する北豊寮(学生寮)で夫婦の留守中の殺人事件。
・被害者 夫婦の一人娘由季(中学2年生)が何者かに勉強部屋で絞殺された。最上たちが勉強を教えたり、可愛がっていた。
犯人は松倉重生と目されたが、証拠不十分で時効に。

<蒲田の事件>

現場は多摩川近く六郷の民家。死後数日。家賃や年金収入暮らしで、何人かの知り合いに金貸しの話も。
・被害者 都築和直74歳、金貸し。妻 晃子72歳。刺殺。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 
老夫婦刺殺事件の容疑者に、時効事件の犯人がいた。今度こそ罪を償わせる、と執念に燃えるベテラン検事に、後輩検事が抱いた苦悩とは…。検事は何を信じ、何を誤ったのか。慟哭のミステリー登場。       

読後感:

 前半は主人公(最上毅、沖野啓一郎)たちに感情移入する気持ちも起こらず、単なる裁判もの思われていた。だけど後半部分になって最上検事が追い詰められていく状況、検事を辞めて冤罪を阻止しようとしても突き崩せない状況にいらだつ姿、いよいよ真実を追い詰めた後の二人の心情描写の箇所に至ってくると、さすがに引き込まれていって映画化される理由も理解されてきた。

 最上家の家庭の状況も、次第に家族というもののお互いを思う感情の変化や、沖野の場合の沙穂の支えの力、そして信頼できる相手がいることのおおきな力が気持ちを楽にさせてくれる要素であることを教えてくれる。
 作品では警察と検察の連携の様子が理解できるたのもよかった。

 根津の時効になった事件、蒲田の殺人事件の犯人を罰するに、とんでもない方法で容疑者を追い込めていく手法に、もし外部の眼が届かなかったら、恐ろしいことになることを警鐘する内容でもあり、警察、検察の大きな力は弱者をいとも簡単におとしめることになるのはなんとしても避けなければと思ってしまう。
  

余談:

 最近ちょっと違う道を車を運転していて、おまわりさんに一旦停止の反則切符を切られた。普段から運転には注意をして一旦停止のところで減速、左右確認を十分にして左折したのに、「タイヤが止まっていなかった」と。
 一体警察は何を見ているのか。検挙ノルマ達成、弱い者いじめの何物でもない。この小説を読んでいて警察とか司法とかのバックの大きさに個人のいかに弱い立場かを知った思いである。
  
背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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