2011-08-25
(作品は、雫井脩介 『火の粉』 幻冬舎による)
雫井脩介: 1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年に第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作「栄光一途」でデビュー。2005年に「犯人に告ぐ」で第7回大藪春彦賞を受賞。著書に「虚貌」「火の粉」「白銀を踏み荒らせ」など。 |
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物語の概要: 図書館の紹介文より
元裁判官で、現在は大学教授を務める梶間勲の隣家に、かって勲が無罪判決を下した男・武内真伍が引っ越してきた。嫁の雪見が彼の異常性に気付いたころには、「火の粉」は大きな炎となっていた。犯罪小説の最高傑作。
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読後感: 何か息苦しい雰囲気が漂う作品である。起こることになにか不安がまとわりつき、素直に読み取れない。さらに梶間家の大家族構成による介護の実態が生々しくて疲れてしまう。もっとからっとしたものの方を好む。 「犯人に告ぐ」とか「クローズド・ノート」の感動的とも思えるあの作風が懐かしい。この作品の前にどちらかというと同様な「犯罪小説家」を読んでいたが、さすがこれは途中で中断してしまった。 図書館でも本作品が2冊とも残っていたのもうなづける内容である。 後半になってくると危険な事柄の素性が次第に明確になってきて武内と池本のいずれが正しいかの興味に移ってきてやっと犯罪小説らしくなってくる。「火の粉」の意味も明らかになって最終段階に入っていく。 |
余談: 雫井脩介作品を4冊ほど読んだが、まだ何となくつかみ所がないといった感じ。 「クローズド・ノート」がちょっと異色で他の作品が犯罪とその心理的なものを扱っているのが多かったかなと言えるが、もうひとつ作風がまとまらない。 まだ若手の内だろうと思うので、この後を期待したい。 |
背景画は舞台となる庭付き戸建て住宅をイメージして。