雫井脩介著 『火の粉』
                     







                                   2011-08-25


 (作品は、雫井脩介 火の粉   幻冬舎による)
  

             
  


本書 
2003年(平成年)2月刊行書き下ろし作品。

雫井脩介:

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年に第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作「栄光一途」でデビュー。2005年に「犯人に告ぐ」で第7回大藪春彦賞を受賞。著書に「虚貌」「火の粉」「白銀を踏み荒らせ」など。
 
物語の概要: 図書館の紹介文より

  元裁判官で、現在は大学教授を務める梶間勲の隣家に、かって勲が無罪判決を下した男・武内真伍が引っ越してきた。嫁の雪見が彼の異常性に気付いたころには、「火の粉」は大きな炎となっていた。犯罪小説の最高傑作。

主な登場人物


梶間勲(いさむ)
妻 尋恵
(ひろえ)
祖母(勲の母)耀子

東京地裁八王子支部の部長。 的場一家殺人事件の裁判長。 武内被告に対して決め手が無く無罪判決を言い渡す。 その後退官し、日野市多摩文化大学法学部教授に。 退官後戸建て住宅を購入、息子夫婦を含め6人での同居生活をしている。 姑の介護は尋恵が主に行っているが、お礼の言葉もない。

梶間俊郎(30歳)
妻 雪見
娘 まどか
(3歳)

俊郎は勲、尋恵夫婦の息子。 フリーターで司法試験を目指している。雪見はまどかの世話に追われている。 雪見は隣に越してきた武内に薄気味悪さ感じる。
相田満喜子 川越に住む梶間勲の姉62歳。 母の介護に月2〜3回梶間家を訪れ、尋恵に対しあれこれクレームを付ける。

的場洋輔
妻 久美子
息子 健太

一家三人の惨殺事件の被害者。 洋輔と久美子はバットで撲殺、健太は絞殺される。 近くに久美子の兄の池本亨が住んでいる。
武内真伍

的場一家殺人事件の犯人として逮捕される。 捜査段階で自供していたが裁判で全面否認。 無罪が確定し、梶間勲の隣に越してくる。 独身で近親者もいない資産家の男、51歳。
武内が引っ越してきてから、梶間家に良くないことが頻発し出す。

池本亨(とおる)
妻 杏子

子  和人

的場久美子の実兄。 無罪判決に憤怒の表情で裁判官に迫る。 その後も武内の周辺を嗅ぎ回り、雪見とまどかに近づく。
・和人 杏子の妹の子供、3歳。

野見山司 八王子支部の刑事部捜査担当。 武内の無罪判決に対し、高裁でひっくり返りますよと勲に。

読後感:

 何か息苦しい雰囲気が漂う作品である。起こることになにか不安がまとわりつき、素直に読み取れない。さらに梶間家の大家族構成による介護の実態が生々しくて疲れてしまう。もっとからっとしたものの方を好む。

「犯人に告ぐ」とか「クローズド・ノート」の感動的とも思えるあの作風が懐かしい。この作品の前にどちらかというと同様な「犯罪小説家」を読んでいたが、さすがこれは途中で中断してしまった。

 図書館でも本作品が2冊とも残っていたのもうなづける内容である。
 後半になってくると危険な事柄の素性が次第に明確になってきて武内と池本のいずれが正しいかの興味に移ってきてやっと犯罪小説らしくなってくる。「火の粉」の意味も明らかになって最終段階に入っていく。

 


 

余談:

 雫井脩介作品を4冊ほど読んだが、まだ何となくつかみ所がないといった感じ。 「クローズド・ノート」がちょっと異色で他の作品が犯罪とその心理的なものを扱っているのが多かったかなと言えるが、もうひとつ作風がまとまらない。 まだ若手の内だろうと思うので、この後を期待したい。
 

           背景画は舞台となる庭付き戸建て住宅をイメージして。                     

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