城山真一著 『ブラック・ヴィーナス』



              2016-11-25



(作品は、城山真一著 『ブラック・ヴィーナス』   宝島社による。)

          
 

 本書 2016年(平成28年)1月刊行。

 城山真一(本書より)

 1972年、石川県生まれ、金沢大学法学部卒業。田の著書に「国選ペテン師 千住庸介」(泰文堂)がある。 

主な登場人物:


百瀬良太 能登半島出身、大学卒業後メガバンクに就職。2年間金沢支店勤務後辞め、「いしかわ金融調査部」の臨時職員募集で採用され苦情相談員に。
二礼茜 黒女神。他人からお金を預かって無登録で株取引をしている。
秀島史秋(ふみあき) 金融苦情相談室室長、良太の上司。内閣金融局から「いしかわ金融調査部」に出向中。黒女神を追いかけている。40代半ば。
小ケ田大地 娘のアキツ(アーティスト)が急死(28歳)、死因に関しまともじゃない連中に強請られていて、母親(ガンで余命1年なし)に知られないよう金を払い続けることで黒女神に依頼。
有働

広域暴力団の下部組織である新興勢力西城組の実質ナンバー2。西城の急逝で跡継ぎが話題に。後見人の策士フジオが入れ札を提案。
・テツヤ 有働の若い衆。

新井冬彦 財政省出身の元高級官僚。茜との取引後、政界に打って出る野望を持ち現大臣の絹脇の選挙区に立候補。「新井が有利」の見方がもっぱら。
絹脇青一郎 財政大臣。党内第二グループ次期総理大臣の座に最も近いポジションにいるも、最近の失言続きで次の選挙では黄信号が。
三波忠夫

サンナミ工業社長。
技術屋の婿養子。東証二部に1ヶ月前に上場した。創業家である東出家と三波家は親戚関係で両家の人間で半分以上の株を保有している。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 依頼人のもっとも大切なものを報酬に、大金をもたらす株取引の天才「黒女神」。助手は元銀行員。やがてふたりは、壮絶な経済バトルに巻き込まれていく。
〈受賞情報〉「このミステリーがすごい!」大賞(第14回) 

読後感 

 株取引をメインにした経済バトル。「雨の日に、傘を持っていない人に傘を貸したい」との信念で困っている人のために株取引で会社なり、人を助けていく。最初の方はその痛快さが余りに簡単に株取引で大きな額の入手ができるのでそんな簡単なものじゃないのに、こんな状態じゃ先はしれてるなあと思っていたら、あっさり裏切られることに。

 まずは二礼茜という黒装束の女神が引き受ける条件が面白い。相手の本気度を試す報酬要求が面白みをかきたてる。老舗和菓子屋の場合は5億円の返済の為、種銭込みで3千万の報酬要求。社長は3人娘のための学費分を当てる決心で領収書も契約書もなしで契約成立。2ヶ月後実現するというなんだか夢のような話。

 株にまつわる小説と言うことでどんな手法で記述するのだろうかと期待していたが、読み通して分かることはごく常識的な手法しか載っていなかった。それはまあ仕方のないこととして、話の展開は次第に茜と助手としての百瀬良太とのからみの面白さ、謎の上司秀島史秋の存在。さらにはヤクザの暴力団西城組の後継ぎがらみでの有働との間で依頼を受けるに至り、人間ドラマと共に緊張感が増してくる。

 ラストには中国人の会社乗っ取りがらみと政治家の関わりが出てくるに至り、益々ヒートアップ。一方でブラック・ヴィーナスと言われる茜の経歴が明らかになると共に、最後の一日の勝負で盛り上がりも最高潮になる。
どんでん返しとまでは行かないが、茜の素性がちょっと意外で拍子抜けの感もなきにしもあらず。

  

余談:

 本作品、第14回「このミステリーがすごい!」対象に選定されている。やはり評価は気になるところ。
 要約するとリーダビリティの高さ(一気呵成に読ませる力)とヒロインのキャラの面白さ。危険性としてはリアリティを持ちにくいこと。エンタテインメントの何たるかをよく判っている書き手との評。全くその通りと思う。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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