読後感:
読み始めてヤクザ者の話とわかり、読み続けようかどうか何度か躊躇した。 それというのも著者の経歴を読んでみると競輪に相当はまっているようだし、でも小説家というのは色んな経歴の持ち主が多いし、そんななかで作品の中味が深いものとなればと思い直しつつ・・・。
稼業の中での生き方はまあまっとうな人間のような気もしたし、足を洗おうとする様子でもあり、堀込会長の態度や、岡部の部下の人間も結構すがすがしさも備わっているしで、次第に作品中に引き込まれていった。 中でも盲目になってしまったかほる、その店で働く京香のキャラクターややりとりがほほえましくもあり、岡部とのやりとりにほのぼのとした世界がヤクザ社会での愚かさと対比して興味深く読めた。
盲目のかほるが6歳の時に失明し、盲導犬のフォルテと共に普通の生活が出来ている様子、
「目が見えなくなると、ほかのすべてが鋭敏になるの。 記憶も、よ」と発するかほる。
そしてかほるの素直な自然体の行動が岡部武の魂に響いて稼業から足を洗わせる決心をさせることになると同時に、かほるも固く閉ざされていたこころを岡部によって開くに至った様子には惹きつけられるものがある。
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