白川道著 『終着駅』







              
2011-04-25





(作品は、白川道著『終着駅』     新潮社による。

                
 

 
 本書 2004年10月刊行

 白川道:

 1945年北京生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、様々な職業を経て80年代のバブル期に株の世界に飛び込む。94年、体験を十二分に生かした「流星たちの宴」で衝撃デビュー。エンターテインメント小説会の旗手と絶賛される。著書に「海は涸いていた」「カットグラス」「病葉は流れて」など。
 

主な登場人物:

岡部武(50歳)

関東将星会の幹部の一人。死神と呼ばれている。19歳の時謙介の姉真澄をバイク事故で死なせる。またかほるの両親の事故死も自分のやくざ仲間のせいで、かほるの盲目の因も自分のせいと思っている。父親の経営する化学工場が倒産、武が北海道に追いやる形に。
岡部の舎弟
・冨澤 関東将星会の幹部の一人。岡部の弟分。
・矢吹 岡部の5人の部下の一人。

かほる(26歳)
店員 京香

6歳の時事故で盲目になる。岡部のことを「生きてる匂いがしない。なにもかもがどうでもいいと思っている」と評する。
コーヒーショップと隣りにCDショップを営む。
京香はそこの店員。明るく

小野謙介(45歳)
姉 真澄

幼い頃片親同士ということで、岡部武、真澄、謙介姉弟は強い連帯感で結びついていた。
東京で弁護士をしていたが、湘南の故郷に帰り、バーを営業している。

堀込一成

関東将星会会長。岡部を稼業に引き込んだ人物。
関東将星会幹部(8人の直系組織)
・ナンバーワン 重松 典型的ヤクザの武闘派。
・ナンバーツー 米山 冷静沈着な男。
・ナンバースリー 谷津倉 射殺される。
・加藤、木谷、佐々木 グループ
・志村、岡部、冨澤 グループ

吉野邦夫 自由が丘に住む設計事務所を営む。かほるの面倒を見ている人物。


物語の概要:

 事件で視力を失ったかほる。「彼女の眼に再び光を与えたい。そのためなら、命など喜んで投げ出そう」。闇から解き放たれる日を心待ちにしていたある日、またしても事件は起きてしまった…。

読後感:

 読み始めてヤクザ者の話とわかり、読み続けようかどうか何度か躊躇した。 それというのも著者の経歴を読んでみると競輪に相当はまっているようだし、でも小説家というのは色んな経歴の持ち主が多いし、そんななかで作品の中味が深いものとなればと思い直しつつ・・・。

 稼業の中での生き方はまあまっとうな人間のような気もしたし、足を洗おうとする様子でもあり、堀込会長の態度や、岡部の部下の人間も結構すがすがしさも備わっているしで、次第に作品中に引き込まれていった。 中でも盲目になってしまったかほる、その店で働く京香のキャラクターややりとりがほほえましくもあり、岡部とのやりとりにほのぼのとした世界がヤクザ社会での愚かさと対比して興味深く読めた。

 盲目のかほるが6歳の時に失明し、盲導犬のフォルテと共に普通の生活が出来ている様子、
「目が見えなくなると、ほかのすべてが鋭敏になるの。 記憶も、よ」と発するかほる。

 そしてかほるの素直な自然体の行動が岡部武の魂に響いて稼業から足を洗わせる決心をさせることになると同時に、かほるも固く閉ざされていたこころを岡部によって開くに至った様子には惹きつけられるものがある。

   
余談:
  作品の内容によってその作家の生い立ちとか考え方とかが自ずと現れてくるものだと思えるものがある。
 それによりその作品を嫌いになったり好きになったり、判らないものである。
背景画はネットの旅ログ北海道より絵笛駅付近のフォトより。


                  



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