白川道著
                   『最も遠い銀河』






              
2011-04-25



(作品は、白川道著 『最も遠い銀河』     幻冬舎 による。

                
 

  本書 2009年7月刊行 書き下ろし作品。

 白川道:

 1945年北京生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、様々な職業を経て80年代のバブル期に株の世界に飛び込む。94年、体験を十二分に生かした「流星たちの宴」で衝撃デビュー。エンターテインメント小説会の旗手と絶賛される。著書に「海は涸いていた」「カットグラス」「病葉は流れて」など。
 
主な登場人物:

桐生晴之

新進気鋭の建築家。個人設計事務所を立ち上げる。
早くに両親を亡くし小樽で貧しい時を過ごすも、美里と東京に出て、不良グループのリーダー的存在となったが、あるきっかけで建築家としての夢に生き直す決心をする。

江畑美里 晴之が貧しい過去をともに生きた恋人。
李京愛 美貌の有名ジュエリーデザイナー。
木島浩 晴之の不良時代からのダチ公。

渡誠一郎
妻 鈴子
息子 良一

小樽署の元刑事。
良一は警視庁捜査一課勤務。

横田将士(まさし) 誠一郎の後輩の小樽署刑事。

葛木美希也
妹 希世

晴之の大学時代からの親友。旧華族の血を引く名門の家系。建築家としてのライバルでもある。
堀峰次郎 晴之の大学時代からの親友。「サンライズ実業」のホテル事業部門勤務。

清家茜
兄 淳介

巨大企業「サンライズ実業」の会長清家淳蔵の孫娘。会長の秘書をしている。
兄の淳介はよからぬ仲間と付き合っている。会長は淳介を嫌っている。

須藤健一
妻 綾乃

晴之の行く手を阻む大物建築家。

小田作治

小樽高島漁港の漁師。


物語の概要:(図書館の紹介文より)

上巻   
 身を寄せ合い、貧しさを耐え抜いた男と女。非業の死を遂げた女は、故郷・小樽の海に眠ることを望み、男はそれを叶えた。女の夢は、男が設計した建築物が小樽の町に建つことだった。男はその野望に踏み出すが…。

下巻
 男と友は、女の命を奪った者への復讐を企んだ。だが、癌に体を蝕まれた元刑事が、現役警察官の息子とともに男を追い詰める…。人間のあらゆる精神の営みと業を、祈りにも似た筆致で描き切った感動巨編。


読後感:

 先に読んだ「天国への階段」といいこの作品も相当胸に応える作品である。 若い時代に辛い思いを経験し、お互いのものから再起のきっかけを掴んだ桐生晴之と李京愛、その後歩んだ日陰に落ちた種子の歩んだ道、そして恋人とも言える美里を覚醒剤でぼろぼろにされて亡くした桐生晴之が世の中に認められる建築家を目指す。 そこでは建築界でのすさまじい追い落としと妨害にあいながらも、生い立ちや育った環境の違いも大きい大学時代の同期の三人との友情と交流、そして若い時代の不良グループでの相棒ともいうべき木島浩との絆に結ばれつつ復讐の念をたたきつける。

 一方で定年退職した元刑事渡誠一郎の娘の梢が事故死した同じ小樽の海で眠る身元不明の女性の魂を葬ってやるために執念深く真相に迫る親子の刑事と仲間たち、次第に元刑事が桐生晴之の心の痛みを理解するようになった終盤への緊迫感がまたいい。

 作品の中に登場する葉山のマリーナや横浜横須賀道路の描写も自分の近場であるだけに思い入れも深くなった。
 最後まで緊迫感と胸に迫ってくるやりとりに長編にもかかわらず読みふけってしまった。


印象に残る場面:
 

 李京愛が誕生日の前日に作った詩「遠い銀河」の詩の一節:

「光、生まれる朝、光、支配する午後、光、眠る夜、生まれいでたる光輝かざれば、夜の闇に朽ちるのみ、一瞬の光は永遠の輝きをもって遠い銀河に眠る・・・」


   
余談:

 白川道という作家の経歴を見ると、太宰治が好きで、大手電機メーカ、大手広告代理店勤め、旅行会社や書店を起業失敗、2年半で離婚とか、投資顧問会社に入社、後に起業、インサイダー取引やマネーロンダリングなどの違法行為で逮捕、実刑判決を受けたとか、服役中に小説の書き方を勉強など日本のハードボイルド作家としていろんな経験をしてきた模様。 またかなりの競輪のマニアとか。 経歴に恥じない内容は作品を書くのに役立っているような気も。


背景画は小樽の港が見渡せる毛無峠よりのフォトより。


                  



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