読後感:
先に読んだ「天国への階段」といいこの作品も相当胸に応える作品である。 若い時代に辛い思いを経験し、お互いのものから再起のきっかけを掴んだ桐生晴之と李京愛、その後歩んだ日陰に落ちた種子の歩んだ道、そして恋人とも言える美里を覚醒剤でぼろぼろにされて亡くした桐生晴之が世の中に認められる建築家を目指す。 そこでは建築界でのすさまじい追い落としと妨害にあいながらも、生い立ちや育った環境の違いも大きい大学時代の同期の三人との友情と交流、そして若い時代の不良グループでの相棒ともいうべき木島浩との絆に結ばれつつ復讐の念をたたきつける。
一方で定年退職した元刑事渡誠一郎の娘の梢が事故死した同じ小樽の海で眠る身元不明の女性の魂を葬ってやるために執念深く真相に迫る親子の刑事と仲間たち、次第に元刑事が桐生晴之の心の痛みを理解するようになった終盤への緊迫感がまたいい。
作品の中に登場する葉山のマリーナや横浜横須賀道路の描写も自分の近場であるだけに思い入れも深くなった。
最後まで緊迫感と胸に迫ってくるやりとりに長編にもかかわらず読みふけってしまった。
◇印象に残る場面:
李京愛が誕生日の前日に作った詩「遠い銀河」の詩の一節:
「光、生まれる朝、光、支配する午後、光、眠る夜、生まれいでたる光輝かざれば、夜の闇に朽ちるのみ、一瞬の光は永遠の輝きをもって遠い銀河に眠る・・・」
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