初出 2002年11月5・12日合併号〜2003年6月3日号「女性自身」(連載) 2003年12月 光文社刊。 本書 2007年(平成19年)4月刊行。
篠田節子:(本書より) 東京八王子生まれ。東京学芸大学卒。1990年「絹の変容」で第3回すばる新人賞を受賞し、作家活動に入る。‘97年「ゴサインタン」で第10回山本周五郎賞を受賞。同年「女たちのジハード」出第117回直木賞を受賞。著作は「讃歌」「夜のジンファンデル」など
主な登場人物:
古谷妙子(50歳) 夫 長女 美津子 次女 宏美 飼い犬 ポポ
夫と娘二人を抱え家を空けることもままならず、下腹の鈍痛と20年以上付き合ってきて、4ヶ月前に子宮筋腫の手術したが体調は戻らず。 夫は親、兄弟、親類の間でトラブルが起きれば、妻を犠牲にするそんな人間。妻に相談することなく名古屋の実家に土地を買い、家を建てる準備まで。 ・美津子 広告代理店勤め、都心でひとり住まい。 ・宏美 妙子にいつも寄り添っていてくれたが、優しそうな顔をしているが所詮は。 ・ポポ 気質の穏やかなゴールデンレトリバーの9歳(おいぼれ)。
物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
おとなしい飼い犬のゴールデンレトリバーが隣の悪餓鬼の仕打ちに噛み殺す事件が起きる。その結果は世間の反応、夫の対応、娘達の反応とこういう事態になると人間の本当の姿が見えてくる。そして妻の妙子は家を出奔、逃亡生活を選ぶ。追われる立場にこれまた対応する人間の姿が様々。 人殺しから、警察からもマスコミからも世間の目からも追われる身となり、愛犬と逃亡生活を続ける様子は身につまされることも。終の棲家を見つけたかに見えた「オオルリ村」での陶芸家堤との友情? ポポの狩りを始める野生本能の様子、老いを迎えたポポの様子が胸を打つ。しかし何故妙子が愛犬との逃亡を企てたのか、その謎もラストに明かされている。
“ポポとの日常の中の一瞬一瞬が、宝石のように貴重なものに感じられる。”“飼うというのは、死を看取るのを覚悟することでもある”“ペットというのは人間の生活に支障がない範囲内で飼うものですよ”の言葉が身にしみる。