篠田節子著
       『女たちのジハード』




              
2011-07-25



 (作品は、篠田節子著『女たちのジハード』  集英社による。)

                 
 

 初出 小説すばる 1994年(平成6年)7月号から96年8月号にかけ連載、加筆、書き下ろし加えて。
 本書 1997年1月刊行。直木賞受賞作品。
 
篠田節子:
 
 1995年東京生まれ。東京学芸大学卒業後、八王子市役所勤務を経て、作家活動に入る。1990年「絹の変容」で小説スバル新人賞を受賞。以降、「神鳥」「聖域」「カノン」「ハルモニア」等、綿密な取材に裏打ちされた力強さと、独特の耽美性ををあわせ持つ作品を次々に発表。1997年には「ゴサインタン−神の座」で山本周五郎賞、続けて「女たちのジハード」で直木賞を受賞。既成ジャンルの枠におさまらない壮大な物語づくりに定評がある。

主な登場人物:

斉藤康子 T火災に勤めるOL5人組の一人。 総合職の32歳独身。 黙々と補助的な作業をこなしながら3LDKのマンションを手に入れる。
浅沼沙織 昨年4大卒で入社。 T火災にいる自分は仮の姿。 いつか会社を飛び出してと考え、自分を磨こうと・・・。
三田村リサ まもなく24歳、来年中には結婚すると。 身ぎれいで、気だてが良く、よく気の回り、どこに行っても部課長に可愛がられる。
みどり 唯一の既婚者。 康子と同期入社。 普段から職場を仕切っている。
紀子 従順でひたむきでおよそ口答えなどしそうにない女の子と思われるが、その実態は・・・意外な面をもって康子や沙織を驚かせる。

物語の概要:(図書館の紹介文より)
  
 女たちよ!これはオンナの応援歌ではないが、勇気がわく物語である。めげず挫けず我が道をゆく聖戦(ジハード)という企み。


読後感:

 登場する5人のT火災損保に勤めるOLの女性たちがそれぞれの年齢も違うけれど結婚という壁を背負いながらどのような人生を生きていこうともがいていて行くのか、探し求めているのか、その姿、挑戦する過程が描かれていて、読む側もただ単純に毎日を過ごしていることにくさびを打ち込まれた感じ。
 時にこれは喜劇かなと思えることもしばしば。 そうそうこういうこともよくある話とうなづくことも。 男性の立場から見ると、若い女性の辛い姿を認識したり。

 なかでも、沙織が英語で食べていこうと専門学校に通い、細田事務所の手伝いと言うことで無給の下翻訳に精を出すも、そのまま細田の名で雑誌に出ているのを見て抗議する。でも軽くあしらわれ、海外留学の道を選ぶも、現地で英語で生計を立てることなどほんの一握りの人間しかできないと痛烈なショックを受け、ヘリコプターの運転体験ではじめて何を自分が求めていたのかを悟るシーンが印象深い。

 またリサが女性たちの憧れの部署“広報部”に移動となり、そこで社会貢献事業の担当となり、アフリカに支援物資を送る仕事をやる時の活動の姿といい、そんな時に示された康子の年長者としてのアドバイスはさすが。
 しかし、その康子の生き様が最後の章で示される姿もなかなかのもの。
 色んな人の旅立ちの姿にやはりこれは勇気を与える物語であると、女達だけでなく。

   
余談:

 小説って改めて題材は無限だなあと感じた。
「夏の災厄」は直木賞候補に有ったようだが、素人目にもこちらの作品の方がすばらしいと思う。 まあ選考委員の人の意見はあとでみると当たっていることも多いが、先ず自分で感じてついでに参考に読んでみるのがいいかな。

背景画は主題の旅立ちをイメージして”旅立ちのとき”などの合唱を想定し。
 

                               

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