新宮広明著 『サマーキャンプ』


 

              2016-08-25



(作品は、新宮広明著 『サマーキャンプ』   幻冬舎による。)

           
 

 初出 「ポンツーン」(2014年1月号〜2015年1月号)の連載に加筆・修正。
 本書 2016年(平成28年)4月刊行。

 新宮広明:(本書より)

 1970年北海道生まれ。慶応技術大学環境情報学部卒業。テレビドラマ、映画等の企画・プロデュースを経て「G坂のバル」(「en-taxi」掲載)で作家デビュー。

主な登場人物:


高階紗香(さやか)
(32歳)
高木麻里

警視庁捜査一課特殊犯罪対策室第4係の刑事、巡査部長。
・高木麻里 聖浄心会に潜入時のコードネーム。
・長島 対策室の室長、警視。捜査一課のナンバー2。

辻淳子

潜入捜査のプロファイル担当技官、専門職員。

宍戸善次郎

田無署刑事組織犯罪対策課刑事、巡査長。長島室長に頼まれた高階紗香との連絡係。
・愛宕署 木崎刑事。

竹中神菩(しんぼ) 聖浄心会の父主。教団の代表。
渋沢 修道士長。<本部会員室>の管理者。イケメン、唯一の欠点女癖の悪さ。
内野 父主の秘書、側役、修道士補。
加賀美 高木麻里の出家体験の指導修道士。内野と出家同期。
前場 <厚木道場>の修道士長。聖浄心会の前身の読書会参加メンバーの一人。今日までの姿を知る人物。
近田 老警備員。
鏑木 40代半ばの女性修道士。渋沢修道士長から、父主(高木麻里)様のお側にいる様指示される。
<被害者たち>

田崎明子
夫 隆

主婦 失踪。
稲垣時男 デベロッパーのエリート社員。自殺。死ぬ直前精神的に不安、心療内科通院。

田山正行
妻 幸代

司法書士 交通事故死。大井町付近の幹線道路で酔ってダンプに轢かれ。何故大井町に?の疑問残したまま。
田中秋智(あきとも) ホームレス。変死。小学校の教師だったが、児童と問題を起こし身を落とす。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

忽然と姿を消した主婦、自殺したエリート社員、ダンプカーに轢かれて死んだ司法書士。一見何の関係も無い3人の持ち物には、新興宗教「聖浄心会」のチラシが。集団心理の機微をうがつ、骨太社会派ミステリ。

読後感
  

 潜入捜査官高階紗香が新興宗教“聖浄心会”出家体験をし、本出家が認められて潜入、潜入捜査官として4件の一連の連続殺人事件(?)を探り出すという緊迫した状況が展開する。
他方紗香をサポートする辻技官の聡明さと一見ぐうたら刑事の宍戸の頼りになる地道な捜査が一人で乗り込んでいる紗香にとっては堪らなく心の支えに・・・

 限られた世界の中で父主や秘書(内野修道士補)、渋沢修道士長が、また出家体験時の指導者加賀美ら周りの人間が敵か味方か分からぬまま、院内では不穏な動きがある。
 4人の殺人事件の被害者の共通点が見つからないまま、沙香の働きに掛かっている件も、突然に紗香に引っかかるものを感じる。

 院内では内野秘書が渋沢の策にはまり解任され、紗香(高木麻里)が秘書に抜擢される。そして父主が自分であると宣告するよう竹中に命じられる。
 自分が父主であることで回りから注目、監視される代わりに思い切った行動に出られる効用も生まれ事件解決に近づいていく。

 
章の途中に挿入されている犯人(?)なのか、誰か不明の人物の描写が何を意味しているのか?
 いよいよ連続殺人事件のバックグラウンドが紗香、そして宍戸の活躍で絞られてきておぞましい過去が明らかになっていく。
 400ページに近くびっしりと書き込まれい長編であるが、ぐいぐいと引き込まれ読み応え十分。 

  

余談:

 物語の途中で犯人らしい人間の著述が挿入される手法はよく東野圭吾の作品に見られたが、読者にとっては果たしてこの人物かと推察しながら読み、興味をそそる。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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