真保裕一著 『アマルフィ』





              
2011-11-25



 (作品は、真保裕一著 『 アマルフィ 』   扶桑社 による。)

              

 本書 2009年(平成21年)4月刊行。
 
 真保裕一:
 1961年東京生まれ。アニメーションディレクターを経て、91年「連鎖」で第37回江戸川乱歩賞を受賞する。 綿密な取材、堅度の高い文章から生み出される作品群は、幅広い読者の支持を獲得。96年「ホワイトアウト」で第17回吉川英治文学新人賞を、そして97年「奪取」で第10回山本周五郎賞と第50回日本推理作家協会賞を受賞する。


主な登場人物:

黒田康作
(こうさく)
外交官、39歳。黒田が調印式のため出席の川越外務大臣の要人保護のためイタリアに派遣される。その時に少女の誘拐事件が発生、邦人保護の名目でそちらの方に専念する。
安達香苗 外交官補、黒田をレオナルド・ダ・ヴィンチ空港に出迎えた日本人女性。
片岡博嗣 外務省事務次官。黒田康作を引っ張り上げた人物。
イタリア大使館メンバー

・菊原和夫 大使、57歳。本省時代片岡と出世争い。
・西野利明 参事官 大使館のナンバー2。
・今村直也 警備担当、42歳。
・武藤亜暁彦 総務の責任者、34歳。

矢上紗江子
  
(34歳)
娘 まどか
(9歳)

外資系コックス銀行勤務。父親はいない。12月が近い頃、娘とイタリアのアマルフィに旅行する途中、ナポリのホテルでまどかの誘拐事件に巻き込まれる。
光永鞠子(まりこ) ミネルバ・セキュリティに勤める派遣社員。
バルトリーニ警部 イタリア国家警察の警部。誘拐事件の捜査担当。
犯人側

・イアン・ルージン 実行犯。
・ビショップ 事件の首謀者。
“アマルフィ”作戦を計画実行する。


物語の概要:(図書館の紹介文より)
 
  2009年7月公開の映画「アマルフィ」の原作本。ローマで日本人少女が誘拐。真相を追い、外交官・黒田がイタリアを駆ける…。サスペンスの名手が書き下ろす、エンターテインメント小説の新境地。


読後感:

 イタリアのナポリ、ローマ、アマルフィとイタリアでの誘拐事件と、子供の救出に向かう母親の警察や大使館への不信感を払拭しながらの、大使館内の役人気質に抗して邦人保護の任務に徹したい黒田康作の姿は丁度テレビでの“外交官 黒田康作”のイメージそのまま。次第に母親の信頼感を取り戻しながら、またイタリア警察のバルトリーニ警部との信頼関係を築きながら事件解決に向かっていく様子が小気味よく展開する。次第に誘拐事件が用意周到に企てられた大きな事件の隠れ蓑に利用されていることが判明、最終局面につながっていく。

 内容的には映像にすればこの上なく素晴らしいものになりそうな予感がする。小説と映像に区分すれば映像に向いたシナリオのようだ。
 ラストシーンは犯人側の描写になるが、ふと何か違和感を覚えてしまう。日本人がそんなに理解できるものなのかなあ。しかもそのことについての状況を詳述することもなく表面的な描写だけで済むような問題ではないのに。そんな感じを抱いてしまうとこの作品、そんなに感動するようなものでなくなってしまった。残念・・・。

   


余談:

 ヘミングウェイの「老人と海」や「誰がために鐘は鳴る」を読んでみて、その後も物語のシーンが何故か心の隅に残っていて忘れられないのは、こういうのが名作というものなのかと。
 さらっと読めてその時は楽しく読めたけれど、時を経てみるとどんなストーリーだったか思い出せない作品も多いが、やはりどっぷりと作中の描写に浸かって理解できなくて調べてみたりしながら読んだ作品は心に残るようだ。

背景画は本作品の舞台イタリアアマルフィの海岸風景。
 

                               

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