真保裕一著  『天使の報酬』


 


              2015-07-25



(作品は、真保裕一著 『天使の報酬』    講談社による。)

       
  

 本書 2010年(平成22年)12月刊行。
 ・フジテレビ系の2011年放映のドラマ「外交官・黒田康作」の原作が本作品。

真保裕一:

 1961年東京都生まれ。アニメーションディレクターを経て、‘91年「連鎖」(講談社文庫)で第37回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。’96年に「ホワイトアウト」(新潮文庫)で吉川英治文学新人賞、‘97年には「奪取」(講談社文庫)で日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をダブル受賞、’06年「灰色の北壁」(講談社文庫)で新田次郎文学賞を受賞。他の著書に、「取引」「震源」「防壁」「朽ちた樹々の枝の下で」「黄金の島」「夢の工房」(しずれも講談社文庫)、「覇王の番人」(講談社)、「デパートへ行こう!」(講談社)など多数。近著に「ブルー・ゴールド」(朝日新聞出版)がある。
主な登場人物

黒田康作 外交官。日本国外務省一等書記官、法人保護担当領事。法人安全課所属。
サンフランシスコ総領事館

・神坂俊司 総領事。
・細野久志 警備対策官、41歳。神奈川県警より出向。

霜村瑠衣
父親 元信
兄 毅(つよし)

カリフォルニア大学バークレー校の政治学部学生、22歳。3日前から消息を絶つ。
・元信 元厚生労働省のキャリア官僚、75年の入庁組。2003年退職し7年、今はブライトン製薬(北米圏では屈指の製薬会社)本社勤務。毅のひき逃げ事件時ボリビアに入っていた。娘の失踪事件では領事館に依頼の圧力をかける。
・毅 NPOの医師団として赴いたボリビアで2003年ひき逃げ事故で死亡。

柏原奈緒 霜村瑠衣の同級生、米国在留10年。瑠衣にロベルトを紹介。
武石忠実 フリーの週刊誌記者、42歳。2003年のひき逃げ事件の7年後、過去を掘り返しに行くとボリビアに。木場の貯木場で、水死体で発見される。
宇野義也 フリーの記者。2003年人捜しでボリビアに。ここ5年近く行方不明。

ロベルト・パチェコ
(以前の名前 イシイ)

サンフランシスコ州立大学の学生、24歳。南米(ボリビア)からの日系人留学生。霜村瑠衣と知り合うために近づいてきたと言われる。
リカルド・イシイ 霜村毅ひき逃げの犯人とされる。テロリスト容疑で逮捕、獄中死。
外務省

・片岡博嗣 外務次官(外務省の事務方トップ)。黒田康作の陰の保護者。
・稲葉知之 外務省審議官(事務次官に次ぐナンバー2)。79年入庁組。
・斉藤修助 邦人安全課課長 黒田康作の上司。
・吉村進  2003年当時ボリビア大使館に二等書記官として勤務。斉藤より4つ年上の国際協力局のノンキャリ参事官。
・安達香苗 今年の春イタリア大使館より本省に。今は同じ領事局内の旅券課配属。2年前はまだ研修生の身だった。黒田康作との仕事を手伝ったことも。
・市川課長 中南米局南米課。 ボリビア担当 青山英弘
・松原宏美 経済局国際貿易二課 今年配属20代半ば。
商社勤務から転職。

警視庁

・大垣利香子 外事三課、警部補。
・山路    外事三課課長。大垣の上司。
・捜査一課 新居警部補。

中央医学研究センター

・服部郁子 副センター長。
7年前霜村毅はセンターのコロナウィルスの研究班に加わっていた。

矢田部清治郎

元環境相。7年前霜村毅が細菌を持ち出したことを知らされたとき、外務副大臣。
息子:矢田部一郎 甘い投資話に2億の借金。

物語の概要 図書館の紹介文より。
 
 
サンフランシスコで失踪した日本人女子大生の背後には、ある種のウィルスに絡む事件が隠されていた…。外交官・黒田康作が挑む謎。小役人シリーズ、長編書き下ろしで復活。

読後感

 なかなか複雑でやっかいな展開。失踪したサンフランシスコ大学の日本人女子大生に端を発し、やり手官僚出身の霜村元信の息子毅の2003年ボリビアでのひき逃げ事件との関連、日本稲城市の中央医学研究センターのコロナウイルスの研究班に加わっていた毅が突然辞めてボリビアに医療団に参加し、ひき逃げ事故で死亡。犯人が逮捕され、犯人は獄中で死亡。これにまつわる関係者の不可解さ。

 日本側での警視庁内部での捜査一課と外事課、外務省内部、省庁間での責任のなすり合い、人脈の争い、複数の家の親と子の関係、そして複雑な過去の経歴と様々なことが絡みあって展開していく。
 特にラスト近くになってどんでん返しに次ぐどんでん返し?で次々と新たな展開にちょっと唖然。まさに外務省の伏魔殿の様相が。

 それにしても警視庁の外事課大垣利香子警部補の格好良さが気になった。一方で過去に読んだ安達香苗の存在がちょっと物足りなかったかな。

  

余談:

 霜村毅の勤務していた中央医学研究センターから細菌を持ち出したということの描写があり、それも今まさに世間で話題のコロナウィルスの研究者。ただし、今回の場合はMERS(マーズ 中東呼吸器症候群)でもSARS(サーズ)でもないが。すごく身近に感じてしまった。コロナウイルスにもいろんな種類があるらしい。
・表題の「天使の報酬」とは何を意味していたのか。ラスト近くまで行くと見えてきた。

参考:
外交官黒田康作シリーズ
・”アマルフィ” 2009年4月
・”天使の報酬” 2010年12月
・”アンダルシァ” 2011年6月 刊行。

背景画は、主人公黒田康作が所属する外務省建屋のフォト。

                    

                          

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