嶋中潤著 『代理処罰』






              
2014-04-25



 (作品は、嶋中潤 『代理処罰』  光文社による。)

                

 本書 2014年(平成26年)2月刊行。
  第17回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。(「カウントダウン168」を改題)
 
 嶋中潤:(本書より)
 1961年千葉県生まれ。東京工業大学院修了。リクルートグループを経て、宇宙関連企業で国際宇宙ステーション関連業務に従事。現在、宇宙関連団体に在籍中。1999年の第3回日本ミステリー文学大賞新人賞から応募し続け、今回を含め8回の最終候補に残った。晴れて本作で受賞となる。

主な登場人物:

岡田亨(とおる)
妻 エレナ
娘 悠子
息子 聡
(さとし)

40代のサラリーマン。30代初めブラジルサンパウロに赴任、そこで知り合ったエレナ(離婚歴有り)と結婚。8年を経て家族で帰国。今は子供達は実母の元にあずかってもらっている。
エレナは交通事故を起こし、女性を死なせてしまいブラジルに帰国したまま。
悠子はブラジル生まれ、千葉の高校1年生。
聡は日本で生まれ小学生。

橋本功
妻 サンドラ

エレナが勤めていた旅行会社の社長。聡の移植手術費用の提供者であり、誘拐犯の要求金の提供者。
千葉県警特殊捜査一係

・ 中西
・ 菊川 若い方。

朝長葉月
夫 富雄
息子 恭一

葉月 交通事故で轢かれて死んだ女性、60歳。
服部 在サンパウロ日本総領事館邦人保護班で、警察庁からの出向組。
坂上ガブリエル ブラジルでの岡田の支援者。橋本が手配。
ヴィクトール・メンデス エレナの元夫との間に生まれた息子。
加藤早苗 岡田悠子の親友。
関係者以外の誘拐犯?の候補者たち

悠子の携帯から
・福井秀樹 2年前に傷害事件。
          エレナを恨んでいた?(橋本の情報提供)
・山本卓也 金銭トラブル?口論。
・松尾ロナウド エレナに心を寄せる。


物語の概要:(図書館の紹介記事より)

サラリーマンの岡田が高校生の娘を誘拐された。救えるのは、ブラジルに消えた妻なのか。絶体絶命の父親、絶望のカウントダウンが始まる…。〈受賞情報〉日本ミステリー文学大賞新人賞(第17回)

読後感:

 妻のエレナが何故かブラジルに逃げ帰って連絡が取れない。しかも交通事故で女性を死なせてしまって相手の家族への謝罪もしていない。そのことで娘の悠子は学校でのイジメにあったらしい他、何者かに誘拐される。母親がいなくなった父親の岡田にとって娘の事を何も知らないことに呆然とする。誘拐相手の2つの要求(金とその金を母親に持たせるよう)を満たすため急遽ブラジルに飛びエレナを一緒に帰国させなくてはいけない。エレナの帰国には当然殺人罪になることを承知で帰国する覚悟が要求される。
 ブラジルでも不可解な事件が待ち受けている。

 何重にも張り巡らされた事件はどうつながっているのか、一体何がそうさせるのか、はたして娘の悠子は無事に救えるのか? ミステリー大賞新人賞作品ということでテンポ良く物語は展開する。
 ブラジルという地球の裏側でのエレナを巡る出来事と、それを解決してエレナを果たして連れて帰れるのか。
 そして期限に間に合わせるためにうたれた手の結果は・・・。
 最後のどんでん返し?が緊迫感を演出する。

  

余談:

 日本ミステリー大賞受賞という肩書きがやはり作品に箔をつけているように思う。なにもないとまあ凝った筋書きのミステリーだなあと言うぐらいの感じで読んでしまっていただろう。
 ちょっと惜しいのは人の気持ちの機微が盛り込まれていたりさらには内容的に無理かも知れないがユーモアが入ったりするともっと感銘を受けるものになっていたのではと、ちょっと張りっぱなしの感がする。
 娘の母親に対する気持ち、父親である岡田の妻や子供に対する気持ち、警察の中西や菊川と岡田との気持ちの交流がもう少し欲しかったなあと思ったり。

背景画は。主人公の妻エレナが帰国して働いていたというカンピーナス市(サンパウロの北西100キロ)の風景。

                    

                          

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