物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
過去に性的な傷をかかえる小説家・萱野千紘の前にあらわれた編集者・柴田は、悪魔のような男だった。胸苦しいほどの煩悶とそこからの再生を描いた、若手実力派による鬼気迫る傑作心理小説。
読後感:
悪魔のような男柴田と、紹介記事や帯文に表現されていて、さぞやおどろおどろしい人物かと思っていたが、描写される人物は少し変わった人間には違いないが、悪魔と表現されるのはどうかな?
芥川賞にノミネートされた作品ということから、心理小説として評価されたようだが、萱野千紘の柴田に対する従属とも言える態度と、柴田の、引き寄せておいて突き放す行為の異常さ、柴田は自身を「破滅願望のようなものが潜在的にあるんです。人を傷つけたいし、自分を破壊したい」と千紘に言う。千紘も柴田もどちらも病んでいる。
千紘のその要因は子供の頃の異常体験から来るようだ。
一時千紘は柴田の所属する芙容社に「今後一切、芙容社とはお仕事できません」と決別を宣告するが、その後半年ぶりに会った夜再び1年前と同じような関係に陥っていく千紘の感覚にはついて行けない。
教授のアドバイス「誰にも自分を明け渡さないこと。選別されたり否定される感覚を抱かせる相手は、あなたにとって対等じゃない。自分にとって心地よいものだけを掴むこと」と。
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