重松清著 『とんび』


 

              2009-01-25






(作品は、重松清著 『とんび』  角川書店による。)

                
  
 

 北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞、神戸新聞に2003年10月から2004年7月に連載されたものをお夫幅に改稿、加筆したもの。

 本書 2008年(平成20年)8月刊行。

重松清:

 1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て執筆活動にはいる。

  

主な登場人物:


市川安男(ヤスさん) 備後市の他外に出たことがなく、運送会社の支店で小型トラックに乗り、荷物の集配仕事に従事する。
美佐子さん 当時9歳の時両親を広島の原爆で亡くし、ひとりぼっちで居た時に、ヤスさんと出会い結婚。ヤスさんにはできすぎの奥さん。しかし若くして不測の事故で亡くなる。
旭(アキラ) 予定より2週間も早く生まれ、3歳の時母親に死なれ、以降ヤスさんとふたりだけの生活。「とんび」と「鷹」の長い旅路が始まる。

海運和尚
照雲
幸恵さん

薬師院の和尚とその息子夫婦。照雲夫婦には子供がない。
照雲とヤスさんは小さい頃から兄弟同然に育てられる。アキラを我が子と同様に接している。

たえ子さん 「夕なぎ」の女将、農村に嫁ぎ娘(泰子さん)を生むが、舅、姑との折り合い悪く、一人飛びだし備後に戻る。ヤスさんとは幼い頃から姉弟同然に育ってきて、隠し事など無いと思われていたが。


読後感
  

 ひとり父親が子供を育てることの難しさ、周りに気心のわかった友達が居ることでどんなに頼りになり、慰められるか。いろいろな障害にぶつかりながらも、ヤスさんの直球勝負の生き方、照れながら、思っていることと反対の態度を示してしまい、もつれていく状況も、周囲の仲間の思いやりで、ほぐれていく様がさらりと描かれる、ほのぼのとした作品である。あまりにもほのぼのしずきて、なんとなく感情移入ができなくて、今までの重松清作品としっくりこない感じも否めない。


印象に残る場面:

アキラがバツイチで健介という子供連れの由美さんを連れてヤスさんのふるさとに帰省した時のこと。ヤスさんが健介の寝顔を見ながらアキラと由美さんに言う言葉:

「親が子供にしてやらんといけんことは、たった一つしかありゃあせんのよ」
「・・・なに?」
「子供に寂しい思いをさせるな」
 海になれ。
 遠い昔、海雲和尚に言われたのだ。
 子どもの悲しさを呑み込む、海になれ。


  

余談:

 新刊書でたまたま新聞広告を見て、はじめて図書館に購入希望を入れたら予約の順番が早くとれ、真新しい本は折り目もつけられず固くて扱いにくかった。でも真新しい本を手にして読めるのは気持ちのいいものである。予約もいっぱいなので、早く読み終えて、メモを整理して、早く返却してあげよう。

 

背景画は、本書の表紙を利用。

                    

                          

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