印象に残る場面:
◇雄司が俊介に電話での会話: 上巻
川原さんが事件のことで落ち込んで、仕事にも行けない状態で、本人はもはや仕事に戻る気力もなさそうなことを告げ、
「だから今ずっと誘ってるんだ。カシオペアの丘へ行こう―――」・・・
「俺は思うんだけどな、人間は前ばっかり向いてるわけにはいかないんだよ。下を向いたり後ろを振り返ったりするのが人間だと思うんだ」「それはわかるけど・・・わざわざつらくなる思い出を振り返ることはないだろう」「振り返らなきゃいけない思い出なんだ、戻らなきゃいけない場所なんだよ、カシオペアの丘は」
(補足:真由ちゃんが殺害される前、親子三人でカシオペアの丘の遊園地で幸せな時を過ごした思い出がある。)
◇ミウが美智子から倉田千太郎が炭鉱事故で生き埋めの七人を犠牲にして構内に注水を断行し、北都観音を建立し、体内に神さんや仏像を集めている実態を案内されて後、美智子に言った言葉
「わたしはけっこう好きです」「いまは好きかどうかわからないけど、好きになってあげたいと思ってます」とつづけて、服の袖で濡れた顔をぬぐい、「わたし、誰かに謝りつづけるひとって好きなんです」と付け加えた。「・・・謝ってるかどうか、わかんないけどね」「でも・・・ゆるしてあげてほしいなって思います、わたし」
(補足:でもこんな言葉を吐かせるミウにはそれだけの過去があった。(下巻参照))
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