瀬尾まいこ著 『夜明けのすべて』

                  
2022-12-25

(作品は、瀬尾まいこ著 『夜明けのすべて』       水鈴社による。)

         

 本書  2020年(令和2年)10月刊行。書き下ろし作品。

 瀬尾まいこ本書による)

 1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒。2001年、「卵の緒」で坊ちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本「卵の緒」で作家デビュー。 2005年「幸福な食卓」で吉川英治文学新人賞、2008年「戸村飯店 青春100連発」で坪田譲治文学賞、2019年「そして、バトンは渡された」で本屋大賞を受賞した。 他の作品に「図書館の神様」「強運の持ち主」「あと少し、もう少し」「君が夏を走らせる」「傑作はまだ」など多数。

 主な登場人物:
藤沢美沙

PMSの為前の会社辞め、ようやく栗田金属に就職できた。
まわりの社員の理解もあり、三年間無事に働いてこられた。
そこに、私より3つ年下の、パニック障害の山添くんが入ってきた。

山添孝俊(たかとし) 1ヶ月前に入社したばかり、25歳。その前半年間コンサルティング会社勤務。パニック障害でその会社を辞める。
[栗田金属の社員達]

栗田金属(建築資材や、金物をホームセンターに卸す会社)は副社長の弟が体を壊し、その後は社長方針で「ゆっくりやろう」をモットーに、社員六名の小さい会社ながら、社員は仲良し。
・社長 68歳。意欲なし?。
・住川さん はきはき物を言い、世話好き。
・平西さん おしゃべりで皆を笑わせる、陽気。
・鈴木さん 黙々と作業、優しい人。
他に藤沢、山添(若手二人以外全員60歳前後)。

千尋(ちひろ) 山添の彼女だった。
辻本課長 山添の前の会社の上司。仕事の面倒を見てくれた優しい上司。
 物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 「今の自分にできることなど何もないと思っていたけど、可能なことが一つある」…。パニック障害にPMS(月経前症候群)。 人生は思っていたより厳しいけれど、救いだってそこら中にある。暗闇に光が差し込む、温かな物語。
 
 読後感:
 
 一人は藤沢美沙28歳、PMSという月経近くになるとどうしても苛立ち、自分でも分かって止めようと思っているのに、勝手に口から相手を傷つける言葉がでてしまう。 特に社会に出てからが問題に。薬を服用すると寝てしまったり、ヒステリーに周囲を恐れさせたり。 ついに退職せざるを得なく。

 もう一人の山添くんはパニック障害持ち。 何時発生するとも分からない上、電車に乗ることも、狭い場所にじっとしていられないとか。そんな二人が就職できたのが、栗田金属という社長を含め従業員六名のゆるやかな雰囲気の会社。
 藤沢さんは社長にPMSのことを告げ、一方山添くんは他の人には知らせていない。
 しかし、お互いのことを感ずいてしまった二人が交流を通じて次第に克服していく様がユーモラスに描写されている。

 藤沢さんの性格がかなり面白い。山添くんのボサボサ頭に髪を切ってあげるとアパートにおしかけてこけし頭にしてしまったりとお節介を押し売りする。心遣いもすばらしい。
 一方の山添くんは、藤沢さんのイライラが起こるタイミングを推測出来るようになり、その解消法も実行したりと、二人の仲は他の社員たちからは「恋人?」とか「結婚するの?」とか言われるように。
 でもお互いは全然相手を意識しない「好きでも何でもない」と。

 パニック障害については、多少の関係もあり、山添くんの行動や、意識のあり方が大いに参考になった。
 人に理解されない病になっている人への周囲の理解の大切さが身に染みる。


余談:

 PMS:月経前症候群。
 月に一度、神経がいらだって、自分でもコントロールできないくらいにヒステリックになる。
 パニック障害:
 逃げられない場や緊張を強いられる場に出ると苦しくなる。落ち着かないのもパニックのせい。電車に乗ったり、美容院や歯医者などは難関。
 パニック障害の人がウツを併発する割合は50%超え。

 

 

                    

                          

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