読後感:
さくらという36歳の女性の目の前に兄さんと名乗る年下の男の子が現れる。慣れ慣れしさ、図々しさ、お構いなしの気安さで近寄ってくる。でもなんとなく人の良さそうな雰囲気が漂っていて、人を騙そうというようなものを感じさせない。さらに結婚相手の山田家の両親は元より、さくらの結婚相手の山田さんともごく自然の成り行きでお兄さん風の扱いを受ける。なんとものどかというか、ミステリアスというか。いずれ何かが起きそうな予感はするが。
物語が展開する中、さくらにも、お兄さんにも何か秘密めいた、過去に秘めた物があるようだ。次第に結婚の時期が近づいてくると、さくらの妹のすみれさんが言う「お姉ちゃん、もしかして迷ったりする?」の言葉に結婚前の女の人の気持ちの揺れを想像させる。そしてさくらの過去のこと、どうしておにいさんがさくらのことを仔細に知っているのかなどが明らかになる。
日常生活のごくありふれたところにある動作や言動や事象にそれらを受け取れる敏感さや感性を持ちたいものである。
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