妹尾家の登場人物
妹尾肇
(はじめ)
少年Hと呼ばれる。
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小学校1年から胸に”H.SENO”の文字を編み込んだセーターを着せられていたことから、Hと称される。 |
父親 盛夫 |
神戸で洋服店を営む。戦時になり、消防手になる。Hにとって先を読むことのできる頼りになる父親であったが、戦後は世間の皆が急じたての民主主義一辺倒になったことに、信用できなくなり、Hの問いかけにも黙ることが多くなる。 |
母親 敏子 |
実家は広島県福山、真宗の寺の娘。18歳の時無理矢理結婚させられ、神戸に出てくる。キリスト教の牧師の言葉に感動、クリスチャンに、盛夫、敏子、少年Hも信者に。モットーは“愛情に喜べ、たえず祈れ、すべてのことに感謝” |
妹 好子
(よしこ) |
少年Hより2つ下。兄を慕う優しい子。次第にHに鋭いことを言うようになり、Hも言いくるめるのに苦労する。 |
読後感:
父親が広島から神戸へ一人で出て来て丁稚になったのが15歳のとき。Hが、小学校1年時代から中学5年生を卒業、17歳でどうにか独立、スタートをきるまでを、当時の世相、大東亜戦争から太平洋戦争の状況、終戦の天皇の玉音放送、戦後の暮らしぶり、神戸の町で、学校生活を通して生じるさまざまな活動が、少年の眼を通して身近なものとして展開する。
さまざまな疑問をぶつけ、反抗し、精神不安を起こし自殺未遂までにいたる。そして、立ち直るさまが、時にユーモア溢れるタッチで物語られている。
同じような時代の中で、かたや「ゴールドラッシュ」の少年のすさんだ心根に対し、少年Hの方は、両親や家族、友達、先生といった周囲の暖かなものがあって立ち直れたのかなあと思わずにはいられない。
戦争の様が次々に展開されていくが、ごく身近なものとして感じられ、神戸の空襲の様を読んでいると、自分も3歳頃なのに、当時社宅で自分の家の後ろに焼夷弾が落ち、燃えている様、川岸で真っ赤になった空のなか、土手を老人がトボトボと歩いてくる情景が眼に焼き付いていて、そんなことを思い出しながら、ぐんぐん引き込まれて読んでいった。
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