沢木冬吾著 『約束の森』
 




                2015-09-25



   (作品は、沢木冬吾著 『約束の森』   角川書店による。)

                  
 

 本書 2012年(平成24年)2月刊行。書き下ろし作品。
 

  沢木冬吾:(本書より)

 1970年、岩手県花巻市生まれ。99年、「愛こそすべて、と愚か者は言った」で第3回新潮ミステリー倶楽部賞、高見浩特別賞を受賞。他の著書に「償いの椅子」「天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア」「ライオンの冬」「握りしめた欠片」がある。

物語の概要: 図書館の紹介より

妻を亡くした奥野は、警察を辞し孤独に暮らしていたが、かつての上司から指示を受け、北に向かう。謎の組織の存在と巨大な陰謀。一度は死んだ男が、眠っていた牙を再び甦らせる…。感涙と興奮の超大作。

主な登場人物:

奥野侑也(ユウヤ)
妻 冬子
ドーベルマンのマクナイト

元公安の刑事、49歳。(公安部特別装備部隊に所属。)
上司の太田の推薦で、緒方より”モーターモウテル光芒”の従業員として、裏の仕事を請け負って月が原に来る。
・冬子 20年前妻冬子(元警官)は日本定住難民支援のNPOに参加、襲われ姿を消す。

坂本隼人 自称陸自出身。神之浦から工作員としてスカウトされる。右手は義手。

葉山ふみ
オウムのどんちゃん

ガソリンスタンドに勤め、仙波治子の秘書をつとめる。
父親は公安の外事課にいたが、ふみが生まれる前に失踪。母親はふみの出生届を出さず、15歳になって行政が気づく。母親はホスピスに。

”モーターモウテル光芒”関係者

・仙波治子(はるこ) オーナー。鉄火ばあさんの評判。
・井辺恵蔵 支配人(ここに来て1年半)
・久保田範子 光芒の従業員。

緒方 警視庁公安部公安第一課係長心得、30代半ばの小柄な男。‘N’追跡班長。
石崎 特別装備部隊、現場作戦統括。
西和田 警視庁刑事部部長補佐。
入江 警視庁監察室室長。
神之浦 警視庁公安部長補佐、管理官。
丹野 光芒の宿泊客。プロカメラマン。
赤城

土地のならず者。
・ダイナマイト 赤城の犬。

スカベンジャグループの幹部

コードネーム
・チョーク、ソード、ブリット、ショック

宮田 獣医師。

 読後感
 
 それぞれ曰く付きの過去を持つ三人(奥野侑也、隼人、ふみ)、そしてドーベルマン犬のマクナイトとオウムのどんちゃんのコンビの絡みが、ぎこちなくも次第に信頼感を築いていくあたりの描写がなんとも愉快で和ませてくれる。
 一方、それぞれの任務は謎の多い人物たちが存在し、いったい誰が信用できる者なのか、さっぱりつかめないで物語が展開する。

 Nという人物は実在するのか? 神之浦という公安部の管理官と緒方の言うこと、一方で西和田と入江からの接触でいったい誰の言うことが信用していいのか? 善はいずれなのか。さらにNやスカベンジャーなる者の素性がよく判らないといった中で、さらに赤城とか丹野といった人物が現れ、味方っぽく感じられてくる。
 それだからこそ、侑也、ふみ、隼人及びマクナイト、どんちゃんの仲は信頼関係がうかがえ、また仙波治子と井部恵造の見かけでない優しさといったものが感じられる。

 後半、いよいよNの幹部が奥の院に運び込まれ、それを狙って敵が襲ってき、そして葉山ふみを拉致しようとする人物たちが急襲してきて侑也やふみ、隼人を守ろうとする緒方たちが防戦することに。
 ここにきて誰が敵で、誰が味方かがわかり、そして葉山ふみたちを無事に守れるのかの最後の戦いが展開する。
 さらには奥野冬子の死の真相も明らかに。
 マクナイトの活躍、隼人の不屈さ、赤城の活躍、そして仙波治子と井辺恵蔵のやさしさがあたたかい。
 丹野の素性も明らかに。


余談:
 沢木冬吾という作家の出身は岩手。作品ジャンルとしては推理小説のようだ。図書館の著書を見ても数はそんなになさそう。ということから作風はじっくりと組み立てられた雰囲気ではないかと。これから秋に向かう時期、そんな夜に読んでみたいと。
背景画は作品中の森の中のコテージをイメージして。

                    

                          

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