佐々木譲著 
                     『人質』、『巡査の休日』





                     2014-02-25



 (作品は、佐々木嬢著 『人質』、『巡査の休日』    角川春樹事務所による。)

        
『人質』

 本書 2012年(平成24)12月刊行。書き下ろし作品。

『巡査の休日』  

 本書 2009年(平成21年)10月刊行。書き下ろし作品。

 佐々木譲:

 1950年北海道生まれ。自動車メーカー勤務を経て、79年「適期兵、跳んだ」でオール読物新人賞受賞。90年「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞をトリプル受賞する。

主な登場人物:
『人質』
佐伯宏一 北海道警察本部 札幌方面大通署 刑事課、警部補。
小島百合 同 札幌方面大通署生活安全課、巡査部長。
津久井卓 同 機動捜査隊、巡査部長。
新宮昌樹 同 札幌方面大通署 刑事課、巡査。佐伯の相棒
長正寺武史 同 機動捜査隊、警部。
村瀬香里 小島百合が以前、ストーカーから守った若い女。
中島喜美夫 冤罪で4年間千葉刑務所に服役し、出所。監禁事件の犯人。
瀬戸口裕二 詐欺罪で中島と同じ刑務所に服役。監禁事件の犯人。
山科邦彦 中島喜美夫が出所したときの警察庁の刑事局長。
楠木善男 保守系の国会議員(旭川を地盤の農業族議員)。
高野淳平 楠木善男の公設秘書。
桜井成人 楠木善男の私設秘書、会計担当。
◇監禁事件に居合わせた客
山科早苗 山科邦彦の妻。

来見田牧子
夫 秀也
娘 由香

山科邦彦・早苗の娘。「ラ・ローズ・ソバージュ」でのプライベート・コンサートを予定していた。
秀也は北海道庁出向中の総務省審議官。

竹中光男
妻 久美子

北大名誉教授。

浅見奈津子 ワイン・バー「ラ・ローズ・ソバージュ」のオーナー。 楠木善男の娘。
水島彩 「ラ・ローズ・ソバージュ」の従業員。

『巡査の休日』
佐伯宏一 北海道警察本部札幌方面大通署刑事課、警部補。
新宮昌樹

同 札幌方面大通署刑事課、巡査。佐伯の相棒。佐伯は直接の上司。

小島百合 同 札幌方面大通署生活安全課、巡査部長。バツイチ。
津久井卓(すぐる) 帯広警察署刑事・生活安全課に異動の巡査部長。合同捜査本部に札幌斑として出向。
渡辺秀明 巡査部長。津久井の相棒。津久井より3歳若い。
警察関係者

・岡崎征男(合同捜査本部長)道警刑事部長警視長。
・吉村恒彦 統括官
・河野忠志 北海道警捜査一課長、警視。
・堀江昭   捜査本部、警部。
・原口隆三  捜査本部、警部。
・長沼行男 係長 小島百合の直属上司。
・伊藤成治 佐伯の上司、2歳年上、警部。

村瀬香里 小島百合が以前、ストーカーから守った若い女(風俗嬢)。その後は風俗営業を辞め美容学校に通う。札幌でのよさこいソーラン祭りにチームの踊り手として出場を目指している。
鎌田光也 帯広の強姦殺人の指名手配人。村瀬香里のストーカーとして小島百合から銃弾を受け怪我入院。その後病院から脱走して行方をくらます。

物語の概要:
(図書館の紹介文より)
『人質』
 札幌市街地のワイン・バーで起きた人質立てこもり事件に、小島百合が巻き込まれ監禁された。6年前の冤罪事件。当時の県警本部長への謝罪要求に隠された真実とは…。大好評“北海道警察シリーズ”書き下ろし第6弾。

『巡査の休日』

強姦殺人犯のストーカー鎌田は村瀬香里のアパートに侵入。警護に当たっていた小島百合巡査が逮捕。だが、鎌田は脱走し行方不明に。1年後、脅迫メールが香里に届き、再び百合は警護を命じられる…。シリーズ第4弾。

読後感:
『人質』

「うたう警官」「警察庁から来た男」「警官の紋章」に続き、道警シリーズ第6弾「人質」に当たる。ちなみに第4弾が「巡査の休日」第5弾が「密売人」となる。

 さて以前に第3弾まで読んだことがあるので、ちょっとなつかしくもあり、あのキレの良い、動きのある展開が期待され、読書もはかどった。
 ただ限られた店の中での群像劇ということで、人物の名前と、関係、役割を頭に入れるのに手間取る。カタカナ名から漢字に、夫婦の関係、親族関係、仕事関係と。でも親切に整理して登場人物像が掲げてあってスッキリ。

 主犯?の中島という冤罪事件の人物の気の弱さ、支援者という瀬戸口の変幻自在の態度となにやらきな臭いニオイが感じられる中、紛れ込んだことになる女性警官の小島百合への緊迫感がちょっと薄いのが気になるところであり、第3弾までの面白さに比べると若干落ちるかなの印象。残りの2つの作品も順次読んでみたい。
 

『巡査の休日』

 読む順番は違ったけれど表題の「巡査の休日」から想像するに、警察の休日に起こる何かか、交番巡査のほのぼのとしたものを想像したが、裏切られ、ラストの方でそういうことかと納得。

 裏切られるほど展開は小島百合の村瀬香里のストーカー犯人からのガード部隊、津久井、渡辺の周辺捜査部隊、一方関係なさそうな佐伯、新宮のふたりだけの特別対応斑の行動がめまぐるしく交差し、いずれ収斂するのではないかと想像できるが、なかなか収斂しないでラストに向かって驀進する。
 ソーラン祭りの最後での結末は果たしていかなるものになるやら。なかなか緊張感のまま読める作品である。

  
余談:
 
刑事物として今野敏の作品も同じようにおもしろいと感じるところであるが、今のところ今野敏作品の方に分があるかな。テレビドラマ「隠密捜査」は小説もおもしろかったが、今回のドラマはなかなかおもしろい。小気味よさ、配役の妙いずれも最近のテレビでは傑作ではなかろうかと思う。
 背景画は、本書の裏表紙を利用。