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佐々木丸美著 『雪の断章』 




                   
2010-01-25



 作品は、佐々木丸美著 『雪の断章』  ブッキング による。

               

初出 1975年講談社より同名で刊行。
2006年12月刊行


 佐々木丸美:

 北海道当別町出身、北海学園大学法学部中退。 1975年「雪の断章」でデビュー。 詩的な美文と、ミステリー、ファンタジー、お伽噺、超常現象、仏教思想など様々な要素を絡めた独特の作風が特徴。


主な登場人物:

倉折飛鳥(主人公) あすなろ学園の孤児。小学1年(6歳)のとき本岡家に引き取られる。小学2年の時、家を飛び出し、大通公園で迷子状態のとき裕也に声を掛けられる。
滝杷裕也(たきえ) 北一商事に就職。東京出身、札幌に来てまだ1年。大学生の時大通公園で迷子の飛鳥を見つけ、さらに何度か飛鳥を見とめる。事情を問いただし、あすなろ学園の先生と相談し育てることに。
近端史郎(おうはた) 東邦産業に勤める裕也の親友。いつも一緒に行動している。
おトキさん 裕也の一日おきのお手伝いさん。戦争で主人を亡くし、一人娘は嫁ぎ、一人暮らし。
森谷厚子 東邦産業に勤める22歳、小樽出身の女性。一人住まいで同じアパートに越してくる。
管理人のおじさん アパートの管理人。

本岡家
主人 本岡鋼造
姉 聖子
妹 奈津子

主人は東邦産業で重役夫妻のひな形、二人の子供がいる。
奈津子は飛鳥と同い年。
どの瞳も険しくさげすみの色で飛鳥を見ている。


物語の展開:

 孤児の飛鳥は、雪降る札幌で祐也と出会い、共に暮らす中で密かな恋心を抱きはじめていた。 二人の運命と苦しい程の会いを描いた珠玉の名作。

読後感

 この作品は1975年(もう34年も前)、「二千万円テレビ懸賞小説」に佳作入選でデビューし、ベストセラーになり、斉藤由貴主演で映画化されたそうである。

 飛鳥という孤児の少女があすなろ学園から本岡家に引き取られ(養子でなく)ひどくいじめられた結果飛び出し、裕也に育てられることでゆがんだ(?)心が次第に周囲の温かい心と順子という友達によって支えられ大きくなって幸せをつかんでいくハッピーエンドの小説家と思いきや・・・。飛鳥なる少女の本岡家に対する反発、本岡家の人間との運命、意固地な性格、純粋な感情、心の揺れ、さらに殺人事件まで絡み、ぐんぐんと読者を引きつけていく。

 飛鳥を取り巻く裕也と史郎の取り合わせ、厚子さんとの心を通い合わせながら、裕也への思慕と叶わぬ恋の行く末、生き様、初めての友達の順子との生き方、物事への対処の仕方の違い、トキさんの態度と飛鳥の反応、管理人のおじさんのやさしさ、そして人生の中での別れなど色んな生き方が北海道、雪そして童話<森は生きている>の世界を織り交ぜて描かれている。

 新しい魅力のある作家にまたひとり出会えたかなとの思い。



余談1:
 佐々木丸美の作品の中で、「雪の断章」は<孤児>4部作の一作目に当たる。 つづいて「忘れな草」、「花嫁人形」、「風花」がある。 別に掲げた「崖の館」とは全く異なるシチュエーションでこの作家のものは結構楽しめる作品ではないだろうか。

 
 背景画は本作品の裏表紙の装丁画を利用。

                    

                          

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