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佐々木丸美著 『水に描かれた館』 




                   
2010-02-25



 作品は、佐々木丸美著 『水に描かれた館』  ブッキング による。

                

初出 1975年講談社より同名で刊行。
2008年5月刊行

 佐々木丸美:

 北海道当別町出身、北海学園大学法学部中退。 1975年「雪の断章」でデビュー。 詩的な美文と、ミステリー、ファンタジー、お伽噺、超常現象、仏教思想など様々な要素を絡めた独特の作風が特徴。


主な登場人物:

涼子(私) いとこの中の末っ子。高校2年生。
哲文君 私より3つ年上、2回の受験を失敗、浪人中。 医大を目指していたが、美大に進むつもり。
研さん 29歳、普通のサラリーマン。臨機応変タイプ。 千波と結婚の約束が取り交わされていた。
真一さん 26歳、お父さんと一緒にスーパーマーケットを切り盛り。平凡で努力家、何ごとにも実直堅固でじっくり足がためをするタイプ。
おばさん 館の主。気前が良くて大金持ち、60歳をとっくに過ぎている。
千波ちゃん 由莉ちゃんより1つ年上の優しいお姉さんだった。子供の時両親を事故でなくし、おばさんに育てられ、高校に行かずに様似の館で読書や絵に親しむ。 二十歳の夏、崖から落ちて亡くなる。本当に事故だった?
上記「崖の館」より新たに登場する人物たち 財産目録作成のためコレクション鑑定家4人に謎の一名が紛れ込んでいる。(人物評は作品中にある私=涼子の見解)
小駕(おが)さん 神経質そうで、暗い人。病気と大の仲良しタイプ。
堂本さん 古書鑑定人、伊達男の代表的男性。(キザなやつ)
巴田さん 画商、美術鑑定人。平凡な男性。人の痛みが分かる優しい人。
吹原さん 東洋哲学の専門(学者)。スポーツマンのよう。
石垣さん 紅一点、専門は陶器、骨董一切。ギスギスした目つきと態度で女の魅力ゼロ。ぶっきらぼう。

物語の展開:

 財産目録作成に立ち会うため、再び「館」を訪れた涼子たち。しかし、おばが召集したコレクション鑑定家の中に招かれざる人物が。大時計の点鐘とともに起こる事件とは…。
「館」3部作第2弾。

読後感

 新しく登場する人物たち、四人が訪れると言われていたのに五人の来訪者。果たしてその中に不審者がいるのか。物語は最初から波乱含み。しかも前作「崖の館」で生き残った人物たちもなんだかわけありそうでもある。一方、専門家が色んな知識を展開するのも面白い。

 不可解な事故事件が起き、トリックでなく、超常現象で殺人事件が起き、また殺人までには至らなかった顛末の解明がなされるのにどうも意識と無意識の深層心理現象を利用したものであることが暴かれていくが、でも登場人物の中で悪人のような人物が見あたらないのも前作と同じ。
 オカルトでなく本当に起こりうることでもある様な気を起こさせる作品でもある。

印象に残った言葉:
 
 巴田さんの言葉

「僕は生涯を終えるとき孤独でありたいと思います。 人間の薄情さ、貧困の苦しさ、名声のむなしさ、それらは若いうちは決して理解できません。 なぜなら希望という代物が人生を明るく、つまり人生の真理を逆光させてしまうからです。 老いてからの孤独は本当の孤独です。そのときこそ人は真実人生が見えるのです。 ・・・老人はちょっとした言葉でも人間の意地悪さや優しさを知ります。 結局、人生の何たるかは万人に孤独という教師がついて初めて分かります」
―――老いの孤独は真実の人生が見える―――



余談:
 作家の作品って多作の作家もいるし、割に作品数の少ない作家もいる。多作の作品は何か当たりはずれがあるようで、読むに際して批評なんかをみて選んでしまう。 感動する作品に出会いたいと思うとついついそうなってしまう。 何の予備知識のない状態で読みたいのだけれど。

 
 背景画は本作品の内表紙を利用。

                    

                          

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