◇物語の展開:
財産目録作成に立ち会うため、再び「館」を訪れた涼子たち。しかし、おばが召集したコレクション鑑定家の中に招かれざる人物が。大時計の点鐘とともに起こる事件とは…。
「館」3部作第2弾。
◇読後感
新しく登場する人物たち、四人が訪れると言われていたのに五人の来訪者。果たしてその中に不審者がいるのか。物語は最初から波乱含み。しかも前作「崖の館」で生き残った人物たちもなんだかわけありそうでもある。一方、専門家が色んな知識を展開するのも面白い。
不可解な事故事件が起き、トリックでなく、超常現象で殺人事件が起き、また殺人までには至らなかった顛末の解明がなされるのにどうも意識と無意識の深層心理現象を利用したものであることが暴かれていくが、でも登場人物の中で悪人のような人物が見あたらないのも前作と同じ。
オカルトでなく本当に起こりうることでもある様な気を起こさせる作品でもある。
◇印象に残った言葉:
巴田さんの言葉
「僕は生涯を終えるとき孤独でありたいと思います。 人間の薄情さ、貧困の苦しさ、名声のむなしさ、それらは若いうちは決して理解できません。 なぜなら希望という代物が人生を明るく、つまり人生の真理を逆光させてしまうからです。 老いてからの孤独は本当の孤独です。そのときこそ人は真実人生が見えるのです。 ・・・老人はちょっとした言葉でも人間の意地悪さや優しさを知ります。 結局、人生の何たるかは万人に孤独という教師がついて初めて分かります」
―――老いの孤独は真実の人生が見える―――
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