佐々木譲著 
      『警官の紋章』、『うたう警官』、
『警察庁から来た男』




             2011-04-25


 
 (作品は、佐々木譲著 『警官の紋章』、『うたう警官』、『警察庁から来た男』
    角川春樹事務所による。)



              
      
   
「警官の紋章」  本書 2008年12月刊行
「警察庁から来た男」 本書 2006年12月刊行
「うたう警官」  本書 2004年12月刊行

  
佐々木嬢:
 1950年北海道生まれ。自動車メーカー勤務を経て、79年「適期兵、跳んだ」でオール読物新人賞受賞。90年「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞をトリプル受賞する。

主な登場人物:(「警官の紋章」中心に)

佐伯宏一警部補

北海道大通署刑事課警部補。逸脱捜査の責任で本来なら係の主任だが、特別捜査班のチーフ。 サミット対応特別シフトで本部警務部に出向。しかし自分が担当していて途中取り上げられてしまった盗難車密輸事件に絡む前島の後を追い続ける。
・部下 新宮昌樹

小島百合巡査

大通署生活安全課巡査。ストーカー事件で犯人を拳銃発射して逮捕し手柄。 洞爺湖サミット担当特命大臣上野麻里子のSP補佐として要人警護に。 上野大臣にテロ予告有り。
・警視庁よりSPとして酒井勇樹警部補、成田亜由美巡査。

津久井卓巡査部長

大通署地域課の遊軍。
サミット特別シフトで派遣の警務一課の長谷川哲夫主任と日比野伸也警官失踪を追うことに。

日比野一樹警部

2年前の事故死当時、本部生活安全部企画課長に。 組織改編直前まで薬物対策課長。郡司事件の公判で弁護側証人として証言前日、踏切事故で事故死。 自殺の疑いも。
・警察学校での同期、宮本俊平警部(札幌琴似署交通課勤務)が事故死時の電話相手。 大がかりなおとり捜査事件に関しての証拠を隠し持っている。

郡司徹元警部

北海道警察本部の銃器対策課所属。
・部下に佐伯宏一警部補、日比野卓巡査部長がいた。

<うたう警官>
バンドメンバー達

・諸橋大悟警部補 15年盗犯係のベテラン。千歳署の総務課。
・小島百合巡査 大通署生活安全課総務係、お局さま。
・新宮昌樹 新入り
・町田警部補(係長補佐)、岩井巡査 大通り署強行犯係
・植村巡査部長 他

<警察庁から来た男>
藤川春也(30代半ば) 警察庁長官官房監察官、警視正。道警本部の生活安全部と大通署の生安に緊急特別監察に入る。


物語の概要図書館の紹介文より

「警官の紋章」
 拳銃を所持した警官の失踪、覚醒剤密輸入事件の偽装疑惑…。佐伯刑事たちは、それぞれの任務のため、警官としての信念と誇りをかけて疾駆する。「うたう警官」「警察庁から来た男」に続く、北海道警察シリーズ第3弾。

「警察庁から来た男」
  北海道警察本部に警察庁から特別監察が入った。やってきた監察官は、警察庁のキャリアである藤川警視正。藤川は、津久井刑事に監察の協力を要請する。各紙誌で大絶賛された「うたう警官」に続く道警シリーズ第2弾。

「うたう警官」
  警官殺しの容疑をかけられた刑事に射殺命令が下された。捜査を外された有志たちによって、彼の潔白を証明するための極秘の捜査が始まるのだが…。北海道警察を舞台に描く、書き下ろし警察小説。


読後感

「警官の紋章」

 第3弾ということか、登場人物の関係がなかなか把握出来てなかったのと、描写場面の登場人物がくるくる変わること、“道警最悪の一週間”の事件内容の全体像がすっきりと把握出来ないこと(所々で描写されていてだんだん判ってくるような)でストレスがたまってきてしまう。この著者の作風のようでもう一つ物語に集中出来ない。
 第1弾から読んでいたら理解出来たのかも。

 とはいえ、ラストに近づくに従い、サミット特命大臣上野麻里子へのテロ予告対応に備える小島百合の組と、若い警官日比野伸也の失踪を追う津久井卓と愛知県警の長谷川コンビ。2年前の盗難車密輸事件に絡む前島を追う佐伯宏一警部補と新宮昌樹のコンビの行動が4月17日の洞爺湖サミット警備の結団式をめざしてどう決着がつくかのあたりになると事件の大筋がはっきりしてきて一気に締まってくる。
 やはり第1弾から読んでみたくなった。

「うたう警官」

 先に「警官の紋章」を読み始めたため、なかなか人物像の繋がりとか、過去の事件の内容によく分からないところがあったが、今回「うたう警官」という道警シリーズの第一弾に当たる作品を読んで、先に不明であったことが鮮明になった。さらに人物の関連もなるほどこういう繋がりだったのかと判った。

 今回の物語では津久井卓巡査部長に婦人警官殺しの非疑者としてさらに、日頃の行動から百条委員会の証人として警察内部の暗部を喋られてはとの思惑から、内部手配が行われ、射殺までの行為が本部の意志として実行されようとしている。それに疑問を抱く幾人かの警察官がメンバーを形成し、真犯人を翌朝までに明らかにさせる必要があることの他に、メンバー内部にも敵の通報者がいるというなかなかサスペンスに飛んだ内容で結構面白いものであった。その語りが短い文章でたたみ込まれていくのもテンポ良くて好ましいものであった。

「警察庁から来た男」

 第一弾の「うたう警官」と第三弾の「警官の紋章」を読んだことで、人物の様子、道警内部の組織的なものが飲み込め、物語の内容に集中することができた。今回は警察庁の若い藤川という監察官の姿がなかなか清々しくて好感を持って読めた。シリーズの中で事件は小粒かも知れないがわかりやすくて小気味よい展開に気分が良かった。

 

  

余談:

 警察の大学卒と高校卒とのその後の昇級するルート、上位下達の縦社会、格差社会、本庁と所轄署との関連、移動のメカニズム記述などなかなか警察という機構の内部の様子の描写から大変な社会だと認識。

 背景画は、北海道警察本部庁舎の外観。警視庁の庁舎と似ているなあ。

                    

                          

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