逢坂 剛著  『イベリアの雷鳴』








                
2012-02-25


(作品は、逢坂剛著 『イベリアの雷鳴』   講談社による。)

            


 初出 週刊現代‘97年9月6日号から‘98年11月14日号までの連載を加筆・訂正したもの。
 本書 1999年(平成11年)6月刊行。

 逢坂剛:
 

 1943年東京生まれ、挿絵画家の中一弥の息子。幼少期に母が病死し、父子家庭で育つ。中央大学法学部卒、博報堂に勤務する傍ら執筆活動。1997年31年勤めた同社を退社し、作家となる。ギターとフラメンコをこよなく愛する。

物語の概要 図書館の紹介文より

 1940年。内戦の痛手いまだ癒えぬマドリードに、日系ペルー人の男が現れた。名は北都昭平、職業は宝石商。彼をめぐる人々はやがて、激動する歴史の渦へと巻き込まれていく―。諜報戦という側面から抉る、知られざる第二次世界大戦。

主な登場人物 

北都昭平

日系ペルー人の宝石商

尾形正義

聆明(れいめい)通信ベルリン支局長
レイメイ:日本の通信社

ハイメ・ソトマジョル スペインABC新聞のベルリン特派員 30歳そこそこ。

イネス
(ロマニジョス伯爵夫人)

ソトマジョルの姉
ティモテネ・ガルバン レストラン<カサ・ルイス>のマネージャー
ペネロペ・サルトリオ 同レストランの女性従業員
マリア・デルガード ペネロペの母
グスタフ・レンツ 貿易商社<エクセルシオル>マドリード支店長
ホセ・マンサナレス マンサナレス宝石店の店主
ヴィルヘルム・フランツ・カナリス

ドイツ国防軍情報部(アプヴェア)の長官
カナリス提督と呼ばれる。

ヴァルター・シェレンベルク ナチス親衛隊諜報部(SD)の将校
ルビオ

殺し屋
アプヴェアとSD両方から仕事を請け負っている。

ヴァジニア・クレイトン 英国秘密情報部(MI6)の女性職員
ウインザー公 元英国国王エドワード八世
ウォリス ウインザー公夫人
フランシスコ・フランコ スペイン国家元首・総統

補足: スペイン内戦 1936年7月右翼軍部が叛乱し内戦が始まる。 2年8ヶ月にわたって続き、結果反乱軍の首魁フランシスコ ・ フランコが総統の座に着く。 内戦ではヒトラーとムソリーニの協力支援があったとされる。 ドイツが英仏と会戦を始め、スペインにその恩返しが求められ、スペインの動向がこの作品の主たるねらい所となっている。

読後感:

 読んでいく内に第二次大戦の状況を知るような興味がつのってくる。 そして誰が主人公か中程になって判ってきて果たしてこの作品は何を語りたかったのかと振り返ってみたくて図書館の紹介文を見てしまう。 なるほど諜報戦という見方で第二次世界大戦をとらえているのかと。

 舞台の主がスペインということは逢坂剛作品の 「カデイスの赤い星」 で経験済みであるし、スペインの内戦に絡んではあの 「誰がために鐘は鳴る」(ヘミングウェイ作品) のこと、第二次大戦に関しては 「チボー家の人々」(デュガール作品) が思い出されその補完的な面としてもとらえられ、おもしろく感じられた。

 大戦を諜報戦からとらえたある一面の物語として状況が広がっていくのもなかなか読書というものの効能が感じられ、もっと色んな作品を読んでいきたい思いに駆られた。

 スペイン内戦の時に支援を受けたスペインがその恩義を返す為にドイツについて参戦するか、ドイツとイギリスの膠着状態にある状況を大きく左右させるというヒトラーとフランコ総統との会談のクライマックスシーンはなかなか読者を引き込ませるもので、それに北都昭平がどういう役目を負っているのか、ペネロマ、ソトマジョルのフランコ暗殺が成功するのか歴史は一体どうだったのかと思わず調べてみたくもあった。

スペイン全図 

余談:

 戦争の歴史は単に結果だけを知るだけでなくどんな状況であったのかを知ることで多面的に見る必要がある。 そう言う意味でフィクションとはいえ、小説の中での物語からその一部でも知ることは有意義なことであると感じる。
 映像化されたものは作為的なものがさらに加わるため、やはり小説の方が読者の感覚で想像できるのでさらにいいのでは。
 

背景画は本書の内表紙を利用。

                    

                          

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