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小野寺史宣著 『とにもかくにもごはん』 











                  
2022-10-25

(作品は、小野寺史宣著 『とにもかくにもごはん』           講談社による。)

             

  
本書  2021年(令和3年)8月刊行。書き下ろし作品。

小野寺史宣(おのでら・ふみのり)(本書による)

 1968年千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール讀物新人賞を受賞してデビュー。 2008年「ROCKER」で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。2019年、「ひと」が本屋大賞第二位ニエラバレ、ベストセラーに。 著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、「食っちゃ寝て書いて」「タクジョ!」「今夜」「天使と悪魔のシネマ」「片見里荒川コレクション」「その愛の程度」 「近いはずの人」「それ自体が奇跡」「縁」など。

 主な登場人物:
「クロード子ども食堂」のスタッフ

カフェ「クロード」の後をただで借り、子ども食堂をはじめる。
月二回、午後5時から8時。子ども無料、大人300円。

松井波子
息子 航大
(こうだい)
夫 隆大
(りゅうだい)
(没)

主宰者、全体の責任者、44歳。
・航大 高校2年生。母親からは手伝いと、子どもの話し相手を要求されている。
・夫 わたしの3つ年上。ガラスを作る会社の営業マン。わたしが37歳の時、車の事故で亡くなる。航大小4のとき。

石上久恵
夫 清敏

最年長の59歳。調理担当。
・夫 インテリア会社勤務、59歳。大らかというか無神経。
定年後家にいる時間が増え、衝突増える。

辻口多衣 調理担当のリーダー、38歳。レストランの厨房経験者。
木戸凪差穂(なぎほ)

大学2年生、21歳。受付担当。
就活のPRの為のボランティア活動。
父親は電子部品を作る会社から転職。賃貸の団地住まい21年。
少しでもいい会社に入るしか。

白岩鈴彦 凪穂と同じの大学2年生、21歳。配膳担当。父親はホテルの運営会社社長。イケメン。

森下牧斗(まきと)
母親 貴紗
(きさ)

小学3年生、9歳。
・母親 28歳と若い。 キャバクラ勤めで付き合った片瀬圭一郎にフラれ、妊娠気づき一人で産むことに。以降クラブ勤め。
発言はきつく厳しい。

岡田千亜(ちあ)
父親 友興
(もおき)
母親 春美(離婚)

小学4年生。 2年前、両親は離婚。キッカケを作ったのはわたし(千亜)。
勤め先を辞め、家でお酒に浸り、料理もしなくなった母親に「わたしは、お母さんみたいになりたくない」と。
父親と暮らす。

水野賢翔
兄 英信

ハイツ福住に住む、両親は借金返済で働き、クロード子ども食堂を利用している。
兄もバイト、賢翔を迎えに来るのが遅い。

黒沼時雄

元カフェ「クロード」の店主、オーナー、50歳。
土地持ち、いくつかのアパート所有。道楽でカフェを開店するも、 2年ほどで閉店。 同じ町内会で松井波子から子ども食堂をやりたくて、無料で貸してほしいと乞われ、承知する。

宮本良作
妻 理津(旧姓 品川)

大手ゼネコンに勤めていた仕事人間だった、68歳。
病弱の妻は54歳で亡くなり、最期も看取らず。
娘の紀緒の怒り爆発、「もう会わないから」と。
定年後は紀緒が住む区に引っ越し、一人暮らし。

岡田紀緒(きお)
夫 駿造
娘 千弥
(ちや)

宮本良作・理津の娘、40歳。
自分は「品川紀緒のつもりだから」と父親とは断絶。
夫は区役所の職員。千弥は小学5年生。

 物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 亡き夫との思い出をきっかけに松井波子が開いた「クロード子ども食堂」。 お客さんは、デートに向かうお母さんに置いていかれる小学生や、孤独に暮らすおじいさん…。 やさしくって、おいしくって、心にしみる。現代社会の生きづらさと希望を描く群像劇。
 
 読後感:

 主人公の松井波子は「クロード子ども食堂」の主宰者。月2回、第二・第四木曜日に、午後4時から8時までで運営を始めて五回。午後四時から午後八時までを時間を追った経過で各章が各登場人物を冠して話が展開する。
 食堂に来る子どもたちの他にも、親と一緒だったり、大人がひとりで来ることも。
 そもそもの波子が子ども食堂をはじめようと決心するエピソードが胸を打つ。

 そもそも松井家の家族、その中で夫婦の仲が次第に会話が減り、考え方がすれ違いが。ある日夫が缶ビールを家のそばの公園で飲む姿を認め、こんなことではと波子が面と向かって話しかける。そしてその公園にいつも子どもが晩ご飯にパンを食べる様子を認め、夫がつぶやく言葉が、いつまでも波子の心に残っていた。夫はまもなく交通事故で亡くなった。

 それから動き出した波子の姿は、まるで水を得たように次々と障害をクリアー。 元カフェ「クロード」をただで貸し受け、スタッフもボランティアで集め、自分の息子の航大も子どもの話し相手にさせながらスタートさせる。
 訪れてくる人々にも大人も子どももすんなりといかないことも起こるが、波子の行動、言動はそのまんまの気持ちをメインに次々と人々に受け入れられ、慕われていく姿が頼もしい。
 
 それぞれの家庭にはそれぞれの事情、悩みがあり、波子の素直な考え方、行動が人々に受けられていくのがちょっとうますぎか。
 ラスト、子ども食堂をやるきっかけを作った、エイシンという子どもが現れるところは、ラストにふさわしくほっこりとさせられた。


余談:

 気分がよどんでいるとき、元気がないときに読むには、小野寺史宣作品が適任。
なんか元気がわいてくる。

 

 

                    

                          

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