小野寺史宜 『 ライフ 』



              2021-11-25


(作品は、小野寺史宜著 『 ライフ 』    ポプラ社による。)
                  
          

 
本書 2019年(令和元年)5月刊行。書き下ろし作品。

 小野寺史宜
(おのでら・ふみのり)(本書より)

 千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」でオール讀物新人賞を受賞。2008年、「ROCKER」でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、「東京放浪」、「太陽とさくら」(以上、ポプラ社)、「それ自体が奇跡」(講談社)、「人生は並盛りで」(実業之日本社)、「片見里、二代目坊主と草食男子の不器用リベンジ」(幻冬舎)、「本日も教官なり」(KADOKAWA)、「夜の側に立つ」(新潮社)、「ホケツ!」、「ひと」(2019年本屋大賞第2位/ともに祥伝社)などがある。

主な登場人物:

井川幹太(かんた)

江戸川区平井の荒川沿いに立つ筧(かけい)ハイツA棟102号室に、8年ひとり住人、27歳。
就職した二つの会社を辞め、代理出席バイトや、近くのコンビニでバイト中。202号室に入った、がさつくんのドンドンという足音に悩まされることに。子供のでんぐり返り音にも。

戸田愛斗(あいと)
妻 藍奈
(あいな)
娘 朱奈
(あかな)
息子 風斗
(ふうと)

202号室の妻から追い出されている住人、29歳。
・藍奈 ダンナの浮気を知り追い出して別居中。子供達の面倒を見る必要からちょくちょく202号に車でやってくる。美容師。
・朱奈 6歳。
・風斗 4歳。

中条延興(のぶおき) 103号室の住人、33歳。フリーのライター。書評家を志している。
坪内幾乃(いくの) 101号室の住人。小さい劇団“東京フルコップ”の女優。筧ハイツに入居して2年経つも、幹太との交流なし。中条さんの情報で知り合う。「きれいな人、フェロモンがすごい」と七子さんの評。
幹太の大学時代の筧ハイツの住人たち

大学時代家賃が安いと、住んでいた仲良し四人。就職して出て行く。
・彦坂治也
(はるや)腕時計を作る会社に就職。
・芳賀英作
(はが) 都立高で教師。
・椎葉有紗
(しいは)ハンバーガーチェーンの会社に就職。

筧満郎(みつろう) 筧ハイツの大家さん。優しい人。
草間睦子(むつこ)
夫 和男
息子 守男

幹太の母親、53歳。父親(井川太二)とは離婚決まっていたが、父は10年前病で死亡、その後母は再婚。
・夫 和男 草間工務店の社長。草間も奥さんと死別、母と同い年。
・息子 守男、30歳。
  守男の結婚相手矢部令香さん、28歳。草間工務店の事務員。

萩森澄穂(すみほ) 高二の時のクラスメイト。幹太が代理出席の結婚披露宴で再会、連絡は取り合っている。
貝原恒之(つねゆき)

幹太が勤めるコンビニの店長、43歳。
・大下七子
(ななこ) 旦那がリストラされ1ヶ月の休養中。パート時間を延長してフルタイムに。刑事ドラマもの好き。

郡唯樹(こおり・ゆいき)

筧ハイツ近くに住む高校2年生、17歳。
・両親 父親(航空会社の事務職)が北海道支社に転勤、母親もついて行って唯樹ひとり一戸建て住まい。高校では棋道部だが弱い。
・棚橋ちより クラス違うも同じ高校2年生。同じ棋道部。唯樹と付き合っている?

羽鳥菊子

筧ハイツから歩いて5分にある喫茶「羽鳥」のおばちゃん店主。
ダンナさんは8年前亡くなる。

船木雅代

相模原市のスナック「船」のママ、51歳。
父(井川太二)の浮気の相手。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 アルバイトを掛け持ちしながらひとり暮らしを続けてきた井川幹太。気楽なアパート暮らしのはずが、引っ越してきた「戸田さん」と望まぬ付き合いがはじまり…。ひとりで生きられればいいと思っていた青年が、新たな一歩を踏み出すまでを描いた青春小説。

読後感:

 荒川の近く、筧ハイツに大学生の時代から入居して、同じ学生自体同じく四人で楽しく過ごした時代も過ぎ、同僚たちはそれぞれの就職先に散っていった。そして主人公の井川幹太はその後も8年ワンルームの102号室に住み続けている。
 自身は会社勤めも2つの会社を辞め、代理出席のバイトと近くのコンビニのバイトで気楽な日々。そして筧ハイツの住人たちとの交わりに物語が展開する。

 まずは上の階に入った戸田さんとの騒音問題。戸田家では浮気がばれて追い出された戸田さんではあるが、奥さんは美容師で仕事持ち。幼い子供二人(朱奈と風斗)を預けにちょくちょく。そして子供が跳んだり跳ねたりでますます騒音がたまらない。でもどんな人間か判らないので我慢するしか。その内風斗を怪我?させたことで202号室に呼び出されて・・・。

 中条さんとはゴミ捨て時間のことで注意されそれがきっかけで話をすることに。
 その中条さんの話から、101号の坪内さんとも芝居の勧誘で話すことに。

 物語は戸田さん家の夫婦仲のこと、幹太の家庭の両親の離婚話や母親の再婚話、幹太と高二のクラスメイトとのこと、近くの高校二年生の郡くんとの交流、そしてバイト先のコンビニでの七子さんとのやりとりと、日常起こる様々な事象を通して、幹太が働く意欲が湧いてくる終局へと展開していく。
 父親(井川太二)が浮気して母親(睦子)と離婚話が決まっていたが、間際に父の病が分かり、結局留まって、死後2年経って再婚した母親のことを、幹太が父親を捨てた浮気相手の所に訪ねていった話は、両親の思いを見直すこととなり、自身も働こうという気持ちが湧きあがる要素になったのだろう。


余談:

 本作品を読み出したのは、その前に藤岡陽子著の「いつまでも白い羽根」を読んで感動していた後だったので、急に軽い讀物に感じ、早く次の予約本が来ないかなと思ってしまった。
 読み進む内、次第に事の成り行きが身近な物に感じるようになり、次第に感情移入する内容になっていった。
 途中横尾成吉なる著者の「脇家族」とか「三年兄妹」「百十五ケ月」の題名が上がっていて調べたら仮名で存在しなかった。小野寺史宣作品を図書館で調べると結構予約が入っていて読まれているんだなあと知る。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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